2020/06/16  カテゴリ 

きいてみた!

「デザイン思考でサービスデザインを考える」ワークショップは、オンラインでも実現可能?(後編) 

オンラインワークショップデザイナー・タキザワケイタ氏へのインタビュー!「オンラインならではの」ワークショップの可能性についてお聞きしました。

目次

こんにちは!みんデザ編集部です。
今回は、オンラインワークショップデザイナーのタキザワケイタ氏へのインタビューをお届けしたいと思います。
タキザワさんによると、リアルを超えるオンラインワークショップを実現するためのポイントは、「オンラインの弱点をカバーし、オンラインならではの可能性を最大化する」こと。
前編では、タキザワさんがファシリテーターを務められたオンラインワークショップに参加し、「オンラインの弱点への対処法」を学ぶことができました。
(「オンラインの弱点への対処法」が気になる方はこちら!)
それでは、タキザワさんの考える「オンラインならではの可能性」とは、一体何なのでしょうか?
タキザワさんに、オンラインワークショップの可能性や成功の秘訣について伺いました。
タキザワケイタ氏

タキザワケイタ氏

タキザワケイタ氏 プロフィール
PLAYWORKS株式会社 代表
オンラインワークショップデザイナー/インクルーシブデザイナー/プロジェクトファシリテーター
オンラインワークショップを通じて、新規事業・組織開発・人材育成など、企業が抱えるさまざまな問題を解決へと導く。また、多様なプロフェショナルからなるプロボノチーム 「PLAYERS」のリーダーとして、妊婦や障害者など手助けを必要とする人と周囲の人をLINEでマッチングするサービス「&HAND」や、テクノロジーで点字ブロックをアップデートする「VIBLO」の社会実装などを進めている。
https://keitatakizawa.themedia.jp/

オンラインの不自由さがむしろ可能性になる!?

もちろんインタビューもオンラインです

もちろんインタビューもオンラインです

これまでどのようなオンラインワークショップを実施されましたか?

アイデア創発やサービスデザイン、インクルーシブデザイン、レゴ®シリアスプレイ®、グラフィックレコーディングなどいろいろとチャレンジしています。

まずは、リアルでやっていたものをオンラインに置き換えてみて、うまく行かない部分を改善していく。そしてそこに、オンラインだからできることを積極的に取り入れています。今回のようなサービスデザイン、デザイン思考をテーマにしたワークショップを、オンラインで実施するのは初めてです。

オンラインワークショップをはじめたのは、いつ頃からですか?

3月の中旬頃からです。それまでは、ワークショップは対面で共創するからこそ価値があると思っていて。オンラインだとウェビナーやeラーニングになり、質の高い共創の場づくりは厳しいと思っていました。

オンラインワークショップをやってみて良かったところを教えてください。

まずは、場所を問わないということです。「会場に行かなくていい」「自宅から参加できる」というのが一番大きいと思います。例えば、海外の人にインタビューやブレストもできますし、車椅子を使われている方など移動が難しい方にも参加いただけます。

最近は、障害者の方とオンラインワークショップをおこなっています。カメラをオフにして対話したり、マイクをオフにしてジェスチャーやチャットでコミュニケーションを取れば、視覚障害者や聴覚障害者とフラットに共創できるんです。もともとはオンラインツールの機能を制限することで、障害の擬似体験ができるのではと思っていたのですが、実際にやってみると「健常者が障害者に近づいている」ような関係性になっていました。

少し話がずれますが、コロナによって僕たちが不自由に感じている日常は、障害者にしたら当たり前の日常だったりするんですよね。障害者は不自由な日常を生きてきた先駆者で、そこから僕たちが学ぶべきことは多く、オンラインによって障害者と健常者の関係性を再構築できると感じています。

疑似体験ではなく、「障害のある人に近づける」関係性というのがポイントなんでしょうか?

そうですね。オンラインの不便さによって新しい関係性が生まれたり、創造力を刺激されます。デザイン思考やインクルーシブデザインといった、「共感し合いながら価値を共創していく」アプローチにオンラインは向いていると思いますし、いろんな可能性がありそうでワクワクしています。

オンラインならではの専門性とは?

Googleスライドの使用例

Googleスライドの使用例

逆に、オンラインワークショップならではの難しさを感じることはありますか?

デジタルのリテラシーや環境が制約になってしまうところですね。どうしてもリテラシーの低い方に合わせてプログラムをデザインせざるを得ないので、相対的にアウトプットの質が下がってしまいます。また、いちばんクリティカルなのがネットです。大学生が「月末でネットの速度制限がかかってつながりません」みたいになると、どうしようもないですね・・・。

あとは、オンラインは大人数でのブレストには向いてないです。ワークショップの醍醐味でもある、4・5人のチームで意見をぶつけ合うような創発的な場が、オンラインではつくれないのは悩ましいです… でも逆に、少人数でのブレストには向いているので、2・3人の短時間のワークをメンバーをシャッフルしながら繰り返えしたりしています。

今回のワークショップで「Googleスライド」を使ったのは、参加者の皆さんが日常的に使っているからです。参加者がデザイナーであれば、「MURAL」や「Miro」といったツールを使えてワークの自由度も増すのですが、今はまだ事前にオリエンテーションの場を設けたり、ワークショップ内で使い方を覚えていけるプログラムにする必要がある・・・。世の中的にデジタルリテラシーを上げていこうという段階なので、ツール選択やスキル習得まで含めてデザインしていく難しさはありますね。

それから、ファシリテーターとは別にテクニカルオペレーターが必要で、例えば、「zoom」というオンラインビデオツールを使う場合は、「ブレイクアウトルーム」「チャット」「投票」「スポットライト」など担当者のアサインも必要になってきます。

専門の人材が必要ということでしょうか?

リアルのワークショップでは、アシスタントにフォローしてもらっているんですけど、オンラインでは「テクニカルな部分も理解したアシスタントを育てていかなければならない」というのはありますね。

デザイン思考でオンラインワークショップをデザインする!

デザイン思考で有名な六角形の図!

デザイン思考で有名な六角形の図!

ところで、今回のワークショップのテーマでもある「デザイン思考」について、タキザワさんはどのように考えていますか?

デザイン思考については、僕は特に意識していないんです。デザイン思考といえば、六角形の図で表されるプロセスだったり、プロセスや手法よりも「マインドセット」という話があったりしますが、僕はどちらかというと「マインドセット」という考えに近いです。ユーザーに共感する、クイックにプロトをつくる、検証と改善をまわしていく、といった意識や態度。そして、それを支援する手法がセットになっているのがデザイン思考、という捉え方をしています。

そういった意味では、「オンラインワークショップこそデザイン思考でデザインすべき」だと思っています。リアルワークショップでの体験や知見を持った状態で、オンラインの制約を受け入れ、オンラインの可能性を探求しながら、ゼロからデザインしていくのはとってもエキサイティングです。

デザイン思考のオンラインワークショップに向いているテーマはありますか?

デザイン思考では「リサーチ」や「共感」が大事ですが、コロナで外出ができないという状況においては、自宅の中で使うサービスや商品については自分がターゲットになるので、リサーチがしやすいです。withコロナの意識や行動の変化、afterコロナを見据えたサービス・商品開発は、デザイン思考のオンラインワークショップには適したテーマだと思います。

場数を踏んで「自分の身体を鍛え直す」

オンラインツールでは個人作業をしながらお互いの進捗を見...

オンラインツールでは個人作業をしながらお互いの進捗を見ることができます

オンラインワークショップを実践する際のアドバイスをお願いします。

ワークショップデザイナーの視点で言うと、リアルよりも緻密なプログラムデザインやファシリテーションが求められます。うまくデザインしないと「話したいことがあるけど、言うタイミングがなかった」みたいな人が出てしまったり、カメラをオフにしたまま途中で離脱されることも起こりうる。そういったオンラインならではのポイントを押さえたプログラムデザイン、ファシリテーションが大切です。

あとは、事前の準備がすごく大事です。事前案内やオリエンテーションで参加者のデジタルリテラシーやモチベーションを高めたり、Googleスライドを意図通りにスムーズに使ってもらえるようにシートをデザインしたり。そういった事前の準備がオンラインでは特に重要になってきます。

ファシリテーションでいうと、「リアルな場」がないというのが圧倒的な違いです。リアルのワークショップだと、「ワーク中にみんなが立ち上がって前のめりになっていく感じ」とか「なんとなく不安そうな顔をしている」とか、そういったさまざまな情報を場から感じ取っています。リアルでの実践経験が多い人ほど、その情報を奪われることに不安や孤独を感じると思います。
ただし、Googleスライドのようなツールを使えばワークの進捗を見ることが可能です。「この人はあまり進んでいないな」「このグループは良い感じ」といったことを視覚的に把握できるのは、オンラインならではですね。
それから、ファシリテーション力と同時にトーク力が求められます。オンラインだとファシリテーターの不安な様子はダイレクトに伝わりますし、単調な話が続くと参加者は飽きてきてしまう。気分としてはラジオDJですね。これは僕も苦手なのですが、場数を踏みながら「自分の身体をオンラインモード」に鍛え直しているところです。

afterコロナ時代のワークショップとは?

オンラインワークショップの様子

オンラインワークショップの様子

afterコロナ時代のワークショップについて、リアルとオンラインの関係はどうなっていくのでしょうか?

afterコロナの価値観はwithコロナがどれだけ続き、どういう体験をするか?によって変わってくると思うんですが、基本的にはオンラインがメインになる。そして、どうしても対面でやる必要がある場合のみ、リアルで実施する。また、オンラインだと長時間は厳しいので「2.5〜3時間のワークショップを、1・2週間のスパンで、継続的に実施していく」というスタイルになると思っています。

afterコロナ時代のオンラインワークショップの可能性はいかがでしょうか?

今はまだ、「リアルなワークショップをオンラインに置きかえる」ことがメインになっていますが、これから僕らがオンラインの可能性をどれだけ見つけられるか?にかかっています。
現在は、「エスノグラフィ」「インクルーシブデザイン」「レゴ®シリアスプレイ®」「グラフィックレコーディング」など、オンラインならではの可能性が見えてきたので、引き続き探求していきたいです。

最後に、オンラインワークショップを実施するうえで、こういうものがあればいいなというものはありますか?

オンラインの特徴を最大限に活かしたメソッド・ツールの開発にチャレンジしていきたいですね。例えば、「アバター」で女子高生になりきってみたり、参加者に「AI」がいてアーティスト、こども、宇宙人とブレストできたら楽しいですよね。あとはワークショップに限らず、オンライン会議でも使えるフレームワークやアイスブレイクなどもつくっていきたいです。

オンラインの弱点をカバーし、オンラインならではの可能性を最大限に生かすことで、リアルを超えるオンラインワークショップを実現していきます。

まとめ

オンラインワークショップの可能性はまだまだ未知数で、これから私たちが実践を通して見つけていくものなのかもしれません。その試行錯誤のプロセスこそが、タキザワさんのおっしゃる「デザイン思考でオンラインワークショップをデザインする」プロセスなのだと思いました。

タキザワさん、貴重な機会をどうもありがとうございました。