2019/09/19  カテゴリ 

デザイン思考のお仕事図鑑

UXリサーチャー・樽本徹也さん(中編) 「人間中心設計とデザイン思考の違いって?」

盛りだくさんな初日(※初日の様子はこちら)を終え、2日目は「(ユーザー)調査」の部分!
まずは樽本先生からのレクチャー。初日に学んだ「(ユーザビリティ)評価」は「ユーザーテスト」という名前ですが、実際は「製品の使い勝手」のテストでした。今日の「調査」では「人間」を調査します! とのこと。人間の心を調べる、これぞ人間中心設計の醍醐味です!
UCDとはユーザ中心設計のこと

UCDとはユーザ中心設計のこと

ちなみに、「人間中心設計」「ユーザー中心設計」「デザイン思考」など、それぞれよく聞く言葉ですが、現代ではほぼ同じものだそう。

成り立ちの違いについては次回詳しくお伝えしますが、すべてに共通する理念は「靴に足を合わせるのではなく足に合う靴を作ろう!」。これからのものづくりやデザインに欠かせない考え方です。

今日、体験するのはユーザーインタビュー、ペルソナ設定、カスタマージャーニーマップの作成。よく聞く名前だし、実際にやったことのある人も多いかと思います。でもちゃんと習ったことってなかったかも!

ユーザーの声は聞かない!

いきなり先生から衝撃的な教えが! ユーザーの調査なのに、ユーザーの声を聞いてはいけないんだって! いったいどういうことでしょうか。
じつは「ユーザーの声に応えればユーザーが満足する」というのは、間違った認識だそう。

V=f(x)という考え方があります。
ユーザーの声(V)の背景には具体的なユーザーの体験がある!

ユーザーの声(V)の背景には具体的なユーザーの体験がある!

Vは「voice」、xは「experience」。ユーザーの声(V)の背景には具体的なユーザーの体験がある! というもの。ユーザーの声(V)は、「とまどった」「イライラした」というネガティブな結果を自分で「分析」した結果です。でもユーザーは、専門知識もテクノロジーのトレンドも何も知らない素人です。すべて間違いとは限らないけれど、そんな人の分析を信じていいのでしょうか?

ということで、UXリサーチのユーザーインタビューでは、 ユーザーの (声)を集めるよりx(体験)を集めよう! という考え方で進めます。「分析」はプロフェッショナルである私たちUXリサーチャ(もうなりきってます)が行いましょう! そのほうが、素人の分析よりもはるかに良いソリューションやアイデアが出せるはず!

ちなみに、UXリサーチとよく混同されがちな「マーケティングリサーチ」は、x(体験)ではなくV(声)を集める手法。マーケティングリサーチで使われるアンケートやグループインタビューは、UXリサーチでは使いません!

ユーザーに弟子入りしよう!

ユーザーインタビューのポイントはユーザを「師匠」と見立てて、ユーザの弟子入りをすること。どういうことかを実感するべく、4人グループに分かれて2対2のチーム対抗インタビュー合戦をやってみよう!
チーム対抗インタビューの概要

チーム対抗インタビューの概要

まずは、それぞれのチームに別のシナリオが配布されるので読み込んで役作り。自分チームに配布されたシナリオは、自分たちが師匠で相手チームは弟子。相手チームに配布されたシナリオは、相手チームが師匠で自分たちは弟子になります。ここでインタビュー開始!
インタビュー開始!簡単だと思っていたら…難しい

インタビュー開始!簡単だと思っていたら…難しい

参加者みんな、当初は「こんなの簡単!」と思っていましたが……これがとっても難しい!前半戦では、お互いにシナリオのほとんどの部分を聞き出せずに終わりました……悔しいです!

後半戦に入る前に、樽本先生からインタビューするうえでのポイントを教えてもらいました。それは「ユーザーの体験は時間軸で繋がっている」ということ。前半戦では思いつくままに、それこそ「体験」とは違う部分の「気持ち」とかまで質問しちゃっていたのですが、とにかくユーザーの「体験」を「時系列」に聞いて行くのがポイント。そうすれば、ユーザーの体験は100パーセント取得できる! いかにしつこく聞くか!
よし、後半戦いってみましょう!
みなさん、前半戦よりはかなりの部分を聞き取れましたが、すべての項目を聞き取ることはできませんでした……。知らないことを聞き出すのって本当に難しい! これは経験を積むしかないかもしれませんね!
前半よりよくなったけれど、やっぱり難しい

前半よりよくなったけれど、やっぱり難しい

ペルソナを作ろう!

お次は、みんな大好きペルソナ! なんとなく、あいまいに設定しがちだけど、ちゃんとメソッドがあるんだぞ!
そもそも製品やサービスは、たくさんの人に使ってもらいたいもの。でもたくさんの人に使ってもらいたいから「すべてのお客様のために」製品やサービスを作るのは、最悪の間違い……。
なぜなら、たとえばすべてのお客様に向けた車を作ると、コンバーチブルのバンでオフロード仕様みたいなものができてしまうからです。

ペルソナとは「仮想」のユーザーである! 「架空」のユーザーではない!

仮想:事実を根拠にして仮に想定したもの
架空:事実に基づかずに想像で作ったもの
つまりペルソナの素は「想像」ではなく「人の行動パターンや思考パターン」。これを擬人化したものがペルソナ!
人の行動や思考は数種類にパターン化されます。よく「十人十色」といいますが、樽本先生いわく、十人三〜四色。100人いても、大体ひと桁のパターンに収まるそう。そのパターンを使ってチームや社内で共有するために、興味や関心を持ってもらえるよう擬人化したものがペルソナです。

コンバーチブルのバンでオフロード仕様の車を作らないためにも、ペルソナを設定して開発しましょうね!

ペルソナを作ってみよう!

グループに分かれて既存アプリのペルソナを作ってみましたよ! アプリを決めたら、そのアプリの想定されるユーザー像をたくさん書き出していきます。
アプリの想定されるユーザ像を付箋に書く、書きまくる!

アプリの想定されるユーザ像を付箋に書く、書きまくる!

その中で一番「それっぽい」ものを一つ選びます。この人をペルソナ化してみましょう〜!
各自でこの人のプロフィールや行動パターン、困っていることなどを具体的に書き出していきます。グループ内で共有すると、結構バラバラ! その中でも多かったパターンの人物像を合体させてペルソナにしました!
多かったパターンの人物像を合体させてペルソナをつくる!

多かったパターンの人物像を合体させてペルソナをつくる!

うちのグループでは、人相の悪い奴が出来上がってしまいました〜(笑)
今回作ったのはあくまでも偽ペルソナ

今回作ったのはあくまでも偽ペルソナ

でも、今回作ったのはあくまで「偽ペルソナ」。なぜなら「パターン」を素にしていないから。実際の現場でペルソナ設定をするときは、ユーザーインタビューで見えてきたパターンを使いましょう!

作ったペルソナに旅をさせよう!

最後にカスタマージャーニーを作ってみますよ! カスタマージャーニーも世界中でいろいろな名前がつけられています。カスタマージャーニーの上位概念がAlignment Diagrams。
Alignment Diagramsはカスタマージャー...

Alignment Diagramsはカスタマージャーニーマップの上位概念

Alignはここでは「連携」と訳します。社内の意識を「連携」するためのダイアグラムがカスタマージャーニーです! カスタマージャーニーの作り方はいたってシンプル。必ず横軸は時間(単位は時間や日にちなど) 。
カスタマージャーニーの作り方はシンプル。横軸は必ず時間...

カスタマージャーニーの作り方はシンプル。横軸は必ず時間になります

各ステージにアクション(行動とかステップと同じ)をつけます。項目とアクションをつければ、カスタマージャーニーマップの出来上がり!
各ステージにアクション(行動とかステップと同じ)をつける

各ステージにアクション(行動とかステップと同じ)をつける

あとはユーザーの感情やタッチポイント、課題など、必要に応じて任意でオプション項目をつけましょう。
オプション項目を付ける

オプション項目を付ける

なぜカスタマージャーニーが必要なのか?

欧米ではサイロ、日本では蛸壺に例えられますが、大きな会社やプロジェクトになると、担当者はそれぞれ、自分の担当している箇所だけを意識しがちです。でもユーザーにとっては、そんなこと関係ないですよね。ユーザーの体験を一貫して見るために、カスタマージャーニーを作るのです。
ユーザーの体験を一貫して見る!

ユーザーの体験を一貫して見る!

カスタマージャーニーを作ってみよう!

3人でグループになって、あるサービスが出る前と後のジャーニーマップを比較しよう! なるべくビフォーアフターで「良くなった感」が出せると説得しやすいよ!
3人でグループを作って、ジャーニーマップをつくります!

3人でグループを作って、ジャーニーマップをつくります!

私たちのグループでは、スマホのGoogle Mapアプリをテーマにしました。出る前と出た後の工程の差が一目瞭然です!
Google Mapアプリが出る前と出た後で比較

Google Mapアプリが出る前と出た後で比較

完成後はワールドカフェ形式で展覧会をしましたよ。
展覧会でみんながつくったジャーニーマップを見る

展覧会でみんながつくったジャーニーマップを見る

メンバーで同じマップを見ながら指をさして話すと、対話が生まれます。また、ワールドカフェ形式の展覧会では留守番をする解説者が交代しても、同じ説明ができることがわかりました。それがまさにAlign(連携)! カスタマージャーニーマップを作るとAlignができるいうことですね!

UXリサーチャー・セミナーまとめ

長かったセミナーもあっという間に終了。学びが多すぎてアドレナリンが放出されっぱなし……。実際のUXリサーチの調査段階でも、今日やったようにインタビュー→ペルソナ→ジャーニーマップ(一体ずつのペルソナに対して)の順番で進めるんだそう。
UXリサーチの順番はインタビュー→ペルソナ→ジャーニーマップ

UXリサーチの順番はインタビュー→ペルソナ→ジャーニーマップ

でもこれだけじゃイノベーションは起きません。一般的に言われている、イノベーションのエコシステムというのが以下の図。
イノベーションのエコシステムはこんな感じ

イノベーションのエコシステムはこんな感じ

すべての工程を経ないといけないわけではありませんが、イノベーションを起こす時は、大体ここに出ているものの情報を把握して進めていきます。この図は真ん中から左右に「AS IS」と「TO BE」に分けられます。
AS ISとTO BE

AS ISとTO BE

「AS IS」は現在地点を把握すること、「TO BE」は方向を決めること。現在地点を把握するのがユーザーリサーチです。現在地点を把握せずに方向を決めようとしてもダメ、「AS IS」と「TO BE」は両輪で回していくのが理想的。
通常、「AS IS」よりも「TO BE」がフォーカスされがちですが、「TO BE」をやってもなんだかうまくいかない場合、「AS IS」をきちんと把握できてないのかもしれません。
AS ISはリサーチする TOBEはデザインする

AS ISはリサーチする TOBEはデザインする

次回はいよいよ最終回! UXリサーチの成り立ちについてなど、先生にたくさんインタビューしました。お楽しみに!
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