2019/10/03  カテゴリ 

デザイン思考のお仕事図鑑

UXリサーチャー・樽本徹也さん(後編)「大切なのは自分たちで考え試行錯誤すること」

2日間の「UXリサーチャー養成講座」を受けて、UXリサーチャーがどんな仕事をしているのかをざっくりと知ることができました。

ところで、このUXリサーチャーという仕事、いったいどのように確立されてきたのでしょうか? 再び、樽本先生にインタビューをしました。

UXリサーチの成り立ち

過去を振り返り、ひとつひとつエピソードを話してくださる...

過去を振り返り、ひとつひとつエピソードを話してくださる樽本先生

樽本先生:「UXリサーチャー」という職業は、20数年前は「ユーザビリティエンジニア」と呼ばれていました。やってることは今と一緒で、ユーザー調査→プロトタイプ→評価ですね。

編集部:「リサーチャー」ではなく「エンジニア」だったんですね。

樽本先生:それは、エンジニアと一緒にやる仕事だったから。持っている知識もエンジニアと共通点が多い。テクノロジーや人間工学、心理学を学んできた人が多かったですね。

編集部:どうしてそんな職業が生まれたのですか?

樽本先生:1980年代にPC(パーソナルコンピュータ)が誕生しました。それまでもコンピュータはありましたが、中小企業や一般家庭にも普及し出したのがこの頃です。

PCは人類が作ったもののなかで最も習得が難しい

樽本先生:僕は20年ほど前に大学院で情報工学を学んでいたのですが、当時の先生たちは黎明期からコンピュータに触れていて、マシン語が読めるような人たちなんです。

編集部:マシン語……? ソースコード的なものですか?

樽本先生:コンピュータが直接実行できる、0と1だけが並んでいるような、数値の羅列としてのプログラムのことです。
マシン語とはこういうの。これが読めるって……???

マシン語とはこういうの。これが読めるって……???

樽本先生:そんなのが読めちゃうような、いわば特殊な頭を持った人たちが、初期のPCを作ったのです。それは一般の人には難しいに決まっていますよね。
それで、すぐにユーザビリティが問題になり、ユーザビリティ工学が必要になったんです。
PCって、人間とコンピュータが対話しながら操作するもの。「ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)」ともいいます。「対話」なので心理学が必要になってくるんです。これがユーザビリティ工学の始まりで、コンピュータと人間を通訳してあげるのがユーザビリティエンジニアだったんです。

進化するユーザビリティエンジニアリング

樽本先生:その後、1990年代に、色々な方法論が発明されてきました。
まず、ヤコブ・ニールセン。ユーザビリティ工学の創始者で、UXリサーチの中の「評価」系を確立したのはこの人。
講座でもやった5人評価すれば充分という「5ユーザーテスト」を発明しました。これは今でも広く使われている手法です。

また、カレン・ホルツブラッドは、エスノグラフィ(もともとは文化人類学で未開の民族を調査する際に使われていたフィールド調査)を取り入れた『Contextual Design』を提唱しました。講座でも出てきた「弟子入り」は彼女が開発した調査手法です。
そして、アラン・クーパーは「ペルソナ」を開発しました。
元々、彼はVisual Basicの大元となる言語を開発したくらいのエンジニアだったのですが、その後はインタラクション・デザイナーとして活躍しました。その際に使っていた独自のテクニック(想定したユーザーを頭の中に思い浮かべ、使っているのを想像しながらデザインする)を発展させてペルソナを編み出しました。
左からヤコブ・ニールセン、カレン・ホルツブラッド、アラ...

左からヤコブ・ニールセン、カレン・ホルツブラッド、アラン・クーパーの本

結局はプロジェクトメンバーが試行錯誤するのが大事

編集部:UXリサーチの一連の流れがとてもよくわかりました。すべてはPCが難しすぎたことから始まった…ってなんだか胸が熱くなりますね。
こうして確立された順番が「評価→調査」だったから、講座でも評価のことから学んでいったんですかね?

樽本先生:そうそう、ユーザビリティエンジニアの初期の仕事はユーザーテストだったんです。
でも、いくら評価でプロダクトを改善しても、もともとの製品がよくないとそれ以上よくならないんです。ガラケーをいくら評価して改善してもiPhoneにはならないでしょ。
よりUXのためには、元を辿って行かないといけなかったんですよね。上流の工程へ。
それでもね、今もUXリサーチャの仕事は評価が圧倒的に多いんですよ。
調査はプロジェクトの最初に1度やるくらいだけど、評価は何回も繰り返して改善するから。

編集部:でもリサーチャーがいないプロジェクトも多いですよね。

樽本先生:調査って一番最初にやらないといけないようだけど、あとで調査してもいいし、マニュアルやルールがあるわけではなくて。ひとつの手法にこだわらずに小さく実験しながら効果のある施策を順番に積み重ねていけばいいんです。
「本来はこの工程がある」ということを理解さえしていれば、さしあたりリサーチしないで仮説で始めてもいいと思います。「こういうの欲しい人いるんじゃないかなー?」と思うということは、そう思う人の中に何かその源泉となるものがあるものですから。どこかの時点でお客さんに触れることになるし、筋のいいアイデアであればあとから調査しても全然違ったということにはならないんですよ。

編集部:UXリサーチの基本はふまえつつも、結局は自分たちで考えて試行錯誤していくことが大切ということですね。最後の最後にとても大切なことを聞けた気がします。
ありがとうございました!

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