デザイン思考によって変革した11の業界

スウェーデンの大手家具メーカーIKEA社のデザイン思考は、モノづくりの根幹を成しています。すべての製品はデモクラティックデザイン(民主的なデザイン)の5つの原則「かたち」「機能性」「品質」「サスティナビリティ（持続可能性）」「低価格」に沿って設計されています。

家具の購入を決めるとき、製品の背景にあるストーリーはとても大切です。ストーリーテリングは、顧客との強い感情的な繋がりも生み出します。
デザイン思考は、ファッション業界でも、より重要な役割を担っています。

たとえばNike社には、イノベーションと実験に関与する1000人以上のデザイナーのチームがあります。Brain Station(ブレインステーション)の記事では、次のように紹介されています。

「Nike社はDreamWorks社(ドリームワークス)と提携し、3Dデジタルデザインシステムを構築します。Nike By You Studioは拡張現実、物体追跡および投影システムを活用し、ユーザーがカスタムシューズをオーダーした1時間後には、ピックアップできます。ライブデザイン経験を顧客に提供しているのです」

以前、Indra Nooyi(インドラ・ヌーイ)がPepsiCo社(ペプシコ)のブランド開発において、すべてのモノづくりの中心に(関連するすべての製品とサービスに)デザイン思考を取り入れたとき、私たちはIndraの同社への影響について述べました。

Indra Nooyiがやってくる前、同社は投資家や売り上げを維持できなかった「沈没船」でした。同社は、ターゲット顧客に訴求できたものを把握し、そのデータを使用して製品の刷新を試みました。 IndraがCEOを務めた12年間に売上は80％成長しました。現在、同社は市場での地位を取り戻しただけでなく、他のブランドにデザイン思考を通じて個別化された顧客体験を生み出すよう促しました。

この方法は、Starbucks社(スターバックス)の成功にも影響を与えています。 2008年には、景気後退でトップ交代後、600以上の店舗閉鎖に追い込まれていました。顧客調査を行った後、彼らは地域の環境をより反映する店舗が必要であることに気づきました。これはデザイナーがすべてシアトル本社に所属しており、シアトル基準で考えていることに起因していました。
現在、同社には世界中にデザイナーがおり、深い感動を利用者に与えるデザインスタジオを多く立ち上げています。

Amazon社によるAmazon Prime とNetflix社は、オンライン動画ストリーミングで、新しい次元に到達しました。視聴者は、好きな場所から好きな動画を観ることができます。ほんの数年前までは、テレビなどの娯楽はケーブルに依存しており、視聴者は空き時間にお気に入りの番組を視聴できませんでした。今とは大きく状況が異なっていたのです。
　衛星やケーブルに依存しないサブスクリプションベースのアイデアを導入した最初のブランドはHBO社でした。同社は、動画や顧客体験を再構築するために、デザイン思考を取り込みました。

オーダーメイドのオリジナルプログラムは、視聴者の欲求と行動履歴に基づいて創られました。同社は視聴者にヒントを得た解決策により、視聴体験にイノベーションをもたらしました。さらに、HBOは何度も繰り返し行われるプロトタイピング(試作モデル)を可能にし、低コストで視聴者が求める番組を創り出してきました。

金融業界は、いつも革新的な問題解決を実践しているわけではありませんが、近年、世界最大の銀行はデザイン思考を導入することのメリットを認識しています。

Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)は「Keep the change」プログラムで何千人もの新規顧客を獲得しました。他の主要銀行もBank of Americaの足跡を辿り、デザイン思考で時代を乗り越えることに成功しました。

　Capital One(キャピタルワン)はデザイン会社のAdaptive Path社(アダプティブパス）とMonsoon社(モンスーン)に協力を求め、共感と利用者目線に焦点を当て、絵文字対応のチャットボットやGPS追跡取引履歴などの一連の新しいデジタル機能を作成しました。

2年前、同社は42,000平方フィート(約3,902平方メートル)のイノベーションセンターを立ち上げました。一方で、投資会社のJP Morgan Chase(JPモルガンチェイス）は元YahooのデザインエグゼクティブのTim Parsey(ティム・パーシー)を雇いました。その後すぐ、アプリをリニューアルして、顧客の各地域の画像を織り込むことで「モバイルバンキング体験」を向上させました。彼らは、感情を喚起することで利用者体験を人間らしくしたいと考えていたのです。

　旅行業界でのAirbnb社(エアビーアンドビー)の台頭は、顧客体験を向上させることにより実現しました。ほんの数年前、同社の売上は落ち込んでいました。

ビジネスが失敗した原因を探った結果、掲載している部屋の紹介写真の中に、低品質の写真があることが判明しました。2009年に同社がそれらを高品質の写真に置き換えると、たった1週間で収益が2倍になりました。
また、ユーザー視点で、あらゆる滞在先の詳細を提供して、充分な情報に基づいた予約の決定、販売、収益アップを支援しました。実際、共同創業者のJoe Gebbia(ジョー・ゲビア)は、苦労しているスタートアップから数十億ドル企業に成長することを助けたのは、デザイン思考だったと述べています。

別のサクセスストーリーとして、Hyatt Hotels(ハイアットホテルズ)は、2011年にスタンフォード大学のデザインスクールと協力して、人間中心のイノベーションコンセプトを探し求めました。その後は、旅行者と従業員の両方をケアする体験を提供することに焦点を当てました。まず、所有物件のうち10件をイノベーションラボに変え、照明、家具、部屋のデザインを変更して実験をしました。

同時期にCrown Plaza(クラウンプラザ)はIDEOの協力のもと、ビジネス旅行者の体験をより良くしようと試みました。その結果として、現在Crown Plazaのロビーには、会議スペース、食事と飲み物のオプション、フルサービス、無料で使用可能なデジタル機能などを含む新しい仕事スペースを備えています。