2019/09/27  カテゴリ 

インタビュー

アイデアがどんどん出るブレストの秘訣とは?「面白がる会」の唐品さんに聞いてみた!(前編)

デザイン思考では、多種多様なアイデアを検証するのが不可欠。「発散」と「収束」をして、アイデアを集約します。そのなかでも、発散といえば、ブレスト! みなさんもブレストをする機会は多いと思います。でも、そのブレスト、本当にアイデアが生まれていますか? 言いたいことを言えていますかー?

ブレストといえば、「面白がる会」をご存知ですか? 世の中の課題を、自分ごととして捉え今までの慣例や常識に囚われず、これからはこうだったらいいというアイデアをブレストする会。毎月開催されており、イベントが告知されると、すぐに満席になってしまうほど人気の会なのです!
今回は、その面白がる会の主催者である・唐品知浩さんに、アイデアがたくさん出るブレストの秘訣をインタビューしました。

今回は、前後編に分けてお伝えします! 第1回は、面白がる会が生まれたいきさつと、唐品さんがブレストで心がけていることをテーマに、お届けします。
面白がる会主催・唐品知浩さん。朴訥ながら説得力溢れる語...

面白がる会主催・唐品知浩さん。朴訥ながら説得力溢れる語り口で質問に答えていただきました

唐品知浩さんプロフィール

1973年生まれ。東京都出身。旅行会社勤務の後、リクルートへ。別荘系不動産広告営業に15年間携わる。その後独立し、別荘・リゾートマンション専門のポータルサイト『別荘リゾートnet』の運営を開始。同時にプロに任せず、施主を中心とした素人集団で小屋を製作する『YADOKARI小屋部』を発足。また調布を拠点に活動するデザイナーたちと、まちをリデザインする集団『合同会社パッチワークス』を立ち上げる。

別荘リゾート.net:http://bessoresort.net/
YADOKARI小屋部:http://yadokari.net/category/yadokari-hut/
ねぶくろシネマ:http://www.nebukurocinema.com/

「硬い」不動産業界を、ラフに考える場がほしかった

――まずは唐品さんのいままでを振り返り、何をされてきたかを教えてください。

ぼくのキャリアは、旅行代理店から始まりました。

リクルートに転職したときに、前職の旅行会社の知識を活かそうと思っていたのですが、希望した事業部に空きがなくて。住宅情報の事業部で、リゾート部門に入りました。リクルートでは、15年ずっとその部署で営業をしていましたね。

――ずっとリクルートにいらっしゃる中で、きっかけはいつ降りてきたのでしょうか?

リクルートは、隙間のビジネスチャンスを見つけるのがとても上手な会社です。
「◯◯を買ってください」と自社商品を押し付けるのではなく、顧客が抱えている悩みを、リクルートの持つコンテンツやノウハウでどう解決するのかという提案型の営業をずっと行ってきました。

課題を抱える人と自分のスキルで誰かの課題を解決したい人。その関係性をもっと気軽に作れないかなぁとリクルートを辞めてからも思っていました。
とくに、長年携わっている不動産業界は「硬い」業界。たとえば、ディベロッパーの人がスーツを着て投資対効果や駅から徒歩◯分だから坪単価がいくらなどの数字の話をする、というのが普通です……。もっと気楽に共通の課題を持つ仲間で、駅から離れているけど、こんな物件が作れたら……、こんな共用施設があったら欲しいよねという、前向きな話ができる場があったらいいなあと思っていました。その思いが「不動産を面白がる会」につながりました。

異業種交流会ではなく、前向きにアイデアを交換する場がいい

インタビュー場所は「神田を面白がる会」の拠点、『MID...

インタビュー場所は「神田を面白がる会」の拠点、『MID STAND TOKYO』

――面白がる会といえば、ブレストする「飲み会」。どうしてお酒を飲みながらブレストをするのでしょう?

以前は異業種交流会にも参加していたのですが、名刺交換をするだけで終わってしまって、徒労感が強いなと感じていました。リクルートでも飲み会は多くありましたけれど、だいたい同じメンバーで話している会話もいつも同じで、前に進んでいる感がなくて……。そこで、同じ業種の人と出会え、お酒も飲めて何かを生み出せるような「ブレストをする飲み会」を思いついたんです。

――初めて「不動産を面白がる会」を開催したときはどうでしたか? 人は集まったのでしょうか?

初回から30人くらい来てくれましたね! 参加者のみなさんにはとても好評でした。やることを決めていませんでしたが、物件の広告って不動産屋じゃなくて、売り主がつくった方が面白いよね。とか1回目からアイデアが多く出ましたね。その後、場所もいろいろなコワーキングスペースを借りて開催しました。不動産ディベロッパーも建築家も、スペース運営も、不動産業界の人が一堂に会してみんなで同じ課題について考える場はとても新鮮だったんでしょうね。毎月Facebookで告知して、参加した人がまた知り合いを呼んで、開催しました。毎回のように来てくれる、常連さんもできましたね。

ブレストは何かを生み出すことをゴールにしない。アイデアが出る瞬間が面白い

ワクワクするブレストの秘訣を語る唐品さん。話を聞いてい...

ワクワクするブレストの秘訣を語る唐品さん。話を聞いている私たちもワクワクしてきました

――面白がる会では、毎回目標やゴールを設定しているのでしょうか?

結果として、色々な取り組みが生まれたり、会社ができたりもしていますが、生み出すこと自体をゴールにはしていません。極論、何も生み出さなくてもいいんです。人と人が出会っただけでも変わるきっかけになるんですから。最近のブレスト会議って、何かを生み出すのを重要視して、場が重いですよね。「マネタイズしなきゃ」とか「事業として成立させなきゃ」となると、責任感もあって急にずーんと重くなってアイデアが出なくなってしまう。
面白がる会は、どちらかというと「こんなのがあったら面白い」とか「こういうものがあったら課題を解決できるな」とか。ワクワクするアイデアを出すのを大切にしていて、結論は求めていないのです。

――そういえば確か、アイデア出しのときにはポストイットは……

面白がる会ではアイデアを出すときにポストイットは絶対使わないですね。
アイデアは「その人から出てきている瞬間」が面白い。どういう背景で、どうしてそれが必要と思ったのかを聞くことが大事。ポストイットに書くと、その人の思いがわからないから、心からの同意はしにくいと感じます。

――ブレストの場をつくるのに、心がけていることはありますか?

面白がる会では、ワクワクするアイデアを出す体験してもらうことを大事にしています。ワクワクすることを言うことが、いちばん人を巻き込めます。その意見が自分からでてきたものなら絶対にやりたくなりますよね? ただし、そのタイミングは一年後かもしれない。でもいつかまた絶対やりたくなる。
たとえば、わたしも「建物のお葬式を絶対やるべきだよね」と言っていて、半年後にやっぱりやりたくて、もう一度つぶやいたら、一緒にやりたいと思ってくれた人が反応してくれて、実現しました。
唐品さんのつぶやきがもとで実現した建物のお葬式「棟下式」

唐品さんのつぶやきがもとで実現した建物のお葬式「棟下式」

いちばん大事なのはフラットな場をつくること

――ワクワクを生む場づくりのために設定しているルールはあるのでしょうか? 

一番大事なルールは、「人の意見を否定しない」。何か言うと否定されるかも……と思うとみんなシュンとなってしまいますよね。とりあえず、どんなアイデアでも言い出しやすい環境を作っています。

そして、「上下関係をつくらない」。街のプロジェクトでは、高圧的な人も結構多かったりします。そういう方は固定概念や慣例に囚われているケースも多く、決まった枠のなかでしか話が展開しないことが多い。役所も企業も市民もみんな同じ土俵について、何をすべきなのかを今までの慣例を取り除いて話し合う。そんなフラットな場をつくるのを大事にしています。

――参加者からアイデアを出やすくする工夫をしていますか? アイデアが出てこないときはフォローしているのでしょうか?

議論が行き詰まっているテーブルには、あえて「こんなのどうですか?」と、とんでもなくぶっ飛んだアイデアを投げかけてみることもあります。
あと、テーブルごとのメンバー配置はよく考えて行いますね。たとえば、それぞれのテーブルに経験者を割り当てるなど。いっぽうで、経験者ばかりが同じテーブルに集まると、アイデア出し遊びになることもあるので避けるようにしています。

――ブレストの進行がうまくいかない場合もあるのでしょうか?

テーマ設定が曖昧だったり、難しかったりすると、運営が難しいことがあります。そうならないためにも、明確な課題設定をして「参加者が、アイデアに困っている誰かを救う構造」を必ず作るようにしています。分かりやすくいうと「そこにのび太がいます。あなたはドラえもんになってのび太を救ってください」の構造ですね。
困っている人に対して手を差し伸べるようとすると、自然に議論が生まれます。人を助けるために自分の能力をいかに使うか、を考えるとアイデアが出てきやすいです。

――ブレストに参加するみなさんに伝えたいことはありますか?

課題解決というと、マイナスの状態を0にするというイメージを持つかもしれません。でも、ぼくは「0にとどまらず、幸せな未来を作るために0を突き抜けてプラス1・2・3・4にしよう」ということをお伝えしています。

そして、何よりぶっ飛んだアイデアを面白がる会では出してほしい。最初から実現可能なことばかり考えていてもいいアイデアは出ない。面白いアイデアを実現可能なレベルに落とし込むのは、翌日シラフになってからやればいいですから。

あと面白がる会では、「ここで出たアイデアは誰か一人のものではなくてみんなのもの」とわざと言っています。本当にいいアイデアは外で言いたくないって人もいます。ただ、そのアイデアは寝かせていても何も起こらないし、みんなの前で言ってしまったら、誰かに実現されてしまう危機感も出てきます。そうやってみんなのお尻をやんわりと叩いています。街としては、誰がやったかより、少しでも街の課題が解決されたほうがいいですし。

後編は、面白がる会がその後、どのように広がったか。唐品さんが何を大切してに企画を立てているかに迫ります!
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