2019/12/24  カテゴリ 

インタビュー

「無印良品流デザイン思考」の秘訣を探る〜ユーザー中心のものづくりを取材してきた!(後編)

デザイン思考を活用して、ものづくりをしている企業を訪問する企画。創業以来、無印良品に受け継がれる「生まれながらのデザイン思考」をお聞きしましたよ!

前編では、お客様とのものづくりがどのように行われているか、また、おむつポーチと母子手帳ケースの開発プロジェクト開始の経緯をお聞きしました。(前編はこちらをご覧ください!)

アンケート結果とモニターさんからのフィードバックをもとに、どのような完成品に仕上がったのでしょう⁉ 

そして、無印良品のものづくりの秘訣もお聞きしましたよ!

アンケート結果をもとにプロトタイプを作る!

編集部:何名くらいの方にアンケートをとったのでしょうか? また、その後、開発につなげていく活用する流れを教えてください。

永澤:集まった回答は、10,831名です。

松木:流れとしては、最初にアンケートを実施して、どういうご要望があるかのお声をいただいて、そのあとモニターの方々に実際に試していただき、最終的に、いただいたお声を反映し、開発を進めていきました。

編集部:10,831名ものアンケートをどのように確認し、また開発に反映していくのでしょうか? 
実際のアンケート集計結果(『IDEA PARK』WEB...

実際のアンケート集計結果(『IDEA PARK』WEBサイトより)

松木:キーワード別に見たり、子供人数で見たり、ざっと見た上で、ここがポイントだ、という点を見つけます。
意外だったキーワードや、文字情報だけではわかりづらいものは、一緒に送っていただいた(今使っているポーチなどの)写真も確認しました。その作業をメンバー5人が各自で行い、それぞれが注目したところを出し合い、検討と改良を重ねていきます。
たとえば、「中身が取り出しやすいものがいい」というご要望が多い、とか、「かさばる」ところが不満だね、と大事な点をみなで見つけ合います。
兄弟分をまとめて入れるニーズが高いことがわかったそう

兄弟分をまとめて入れるニーズが高いことがわかったそう

国広:皆さんのすべての希望を叶えることはできませんが、ご要望が多いものや、他の商品を使って満足している点は取り入れたい。そして、不満を強く感じているところや、こうしてほしいと感じる点は、少しでも改善できるように改良を重ね、モニター用の試作品を作りました。

編集部:モニター用の試作品ができるまでに、何回くらいプロトタイプを作り直したのでしょうか?

国広:仮説をある程度たてて、細かい仕様を決めてから作るのでそれほど多くないですが、それでも3・4回はプロトタイプを作ったでしょうか。モニター用の試作品は、ほぼ最終形に近いものになっています。

モニターさんのフィードバックをもとに改良、そしていよいよ商品完成!

編集部:その後は、試作品をモニターの方に使っていただいて、さらに検証していくという流れですね。50名のモニターさんからはどのようにフィードバックをもらったのでしょうか。

国広:質問回答と自由記述、それから実際に物を入れている写真で、レポートを作っていただきました。
実際にモニターさんから送られてきた写真とコメント(『I...

実際にモニターさんから送られてきた写真とコメント(『IDEA PARK』WEBサイトより)

松木:アンケートのときも、「今使っているもののお写真も見せてください」と写真をお願いし送ってもらいました。

編集部:写真で、モニターさんが使っている生の姿が見られるのはいいですね。

松木:文字だけ見てもわからないフィードバックは写真を見ると、「確かに使いづらいよね」とか「やっぱりこういうものが多いね」とか、不満なところや満足している点がわかります。

国広:お腹の赤ちゃんの超音波写真も、USBメモリーで持ち歩いていることがわかりました。私たちの時は印刷写真でしたが、時代が変わっていました(笑)
メモリーなんだ今! 思わずみんなで盛り上がりました。笑

メモリーなんだ今! 思わずみんなで盛り上がりました。笑

松木:そうそう、写真とハンコを……と思っていたら、メモリーなんだ今! みたいな(笑)

編集部:え、メモリーなんですか⁉︎ 知らなかった……。やっぱり、ユーザーの「今の生の声」を聞くことは、とても大切ですね!

編集部:そして、こちらが完成品ですね!(わーい!)※説明キャプションと共にお楽しみください。

【母子手帳ケース】
自治体によって母子手帳のサイズが違うので、大・小 の2...

自治体によって母子手帳のサイズが違うので、大・小 の2サイズ展開なのだそう(知らなかった!)

ジャバラの仕切りで容量たっぷり!これなら、3人兄弟でも...

ジャバラの仕切りで容量たっぷり!これなら、3人兄弟でもまとめて入れられますね

なんと、必要なものだけ持ち出せる付属ポーチが中に。これ...

なんと、必要なものだけ持ち出せる付属ポーチが中に。これは便利!

【おむつポーチ】
赤ちゃんを抱っこしながらでも持ち運びしやすい、手提げ式!

赤ちゃんを抱っこしながらでも持ち運びしやすい、手提げ式!

自立! 自立! 自立! 片手でも取り出しやすい広い間口もイイ

自立! 自立! 自立! 片手でも取り出しやすい広い間口もイイ

中身が減ったら、こんなにぺしゃんこにもできるそう

中身が減ったら、こんなにぺしゃんこにもできるそう

編集部:使い勝手の良い工夫が盛りだくさんですね!
お話を伺った上で実際の商品を拝見すると、様々な工夫がとてもよくわかります。自分のときに欲しかった!

ものづくりの手引き書は、社員みんなが立ち返る場所! ずっと受け継がれてきた商品開発の考え方

編集部:お話を伺うと「 無印良品流ものづくり」のノウハウが確立されていように感じました。マニュアルのようなものはあるのでしょうか? そして、新しいメンバーが入ってきたときにどのように受け継がれるのでしょうか? 

松木:マニュアルはないのですが、ものづくりの手引き書のようなものはあります。

編集部:文字になっているものがあるのですね。素晴らしい! 社外秘ですよね。見れませんよね?(食いつく編集部)

無印さん全員:ですね……苦笑
そこにあるのに見れない、見たいのに見れない、無印良品の...

そこにあるのに見れない、見たいのに見れない、無印良品の手引き書

永澤:手引きというか、考え方、ですね。

松木:無印良品の商品開発の考え方はこういうもの、という成り立ちを学ぶと言いますか、原点を知っておく必要があります。みんな忘れかけているんじゃない? と感じたときや、新しい人が入社したときなど、立ち戻る必要があると感じたら、みんなで読みます。

編集部:みんなが立ち帰れるものがあるのですね。

永澤:そうですね。大前提として、無印良品のものづくりへの考え方があった上で、自分の経験をのせることが大事。「これは無印良品ではやらない」というのはあるんです。わかりやすい例でいいますと、「花柄の商品は作りません」とか。

編集部:花柄! 確かに無印良品にはないですね。(編集部一同納得)

永澤:アンケートでも「デザインがシンプルすぎる」というご意見はたくさんあるのですが、商品にデザインを付加するかというと、なかなか難しい。無印良品としてのベースがありますから。
「大前提として、無印良品のものづくりへの考え方がありま...

「大前提として、無印良品のものづくりへの考え方があります」と語る永澤さん

編集部:なるほど。必要を感じた時に立ち戻れる手引きがある。素晴らしいです。入社すると全員に渡されるものなんですか?

松木:必ず配布するわけでもないですが、いつでも誰もが見れる場所にありますね。

国広:私が所属する企画デザイン担当チームでは、配属したら最初に読むようにと渡されます。商品ジャンルによってチームが分かれていて、それぞれに、ディレクター、先輩チーフデザイナー、新人と、先輩・後輩が混ざりチームになっているので、教えてもらうこともあります。

また、オブザベーション(※)、たとえば一人暮らしのお家にお邪魔して実際の生活の様子を見せてもらうということを、日本国内だけではなく海外でもやっています。新人も参加して、気づいたことをまとめてもらうなど、そういった教育も行っていますね。

編集部:デザイン思考のプロジェクトでは、ユーザーの行動を観察するオブザベーションを行います。それをもう、ずっとされているのですね。

国広:10年以上はやっているでしょうか。開発内容に応じて行っています。

永澤:そうですね、もう無印良品の商品開発手法のひとつとして染み付いている感じです。

(※)オブザベーション:ユーザー観察。ユーザーの生活環境に入り観察し、リアルな消費者のインサイト(潜在意識)を見つけ出す手法。デザイン思考の手法の中でも重要なポイントのひとつ
オブザベーションや現場での教育について語る、国広さん

オブザベーションや現場での教育について語る、国広さん

編集部:最後に、これから取り組みたい商品開発プロジェクトはありますか?

松木:個人的な話でいうと、毎日の生活の中で、ちょっとした使い勝手を変えるだけでスムーズになる、日々のことが流れていくようなものづくりを、やっていきたいと思っています。

国広:デザインチームは素材を作っているメーカーや加工工場に行くことが多く、新しい技術や素材を開発している技術者の方にお会いする機会も多いのですが、それらをどんな商品に展開したらいいかのアイデアを求めていらっしゃることが多いので、私たちがつくりたい商品にマッチする技術や素材を見つけられたらと思っています。

永澤:私は開発担当者ではないので、お客様に期待されているカテゴリーの中からひとつでも多くのプロジェクトが立ち上がるよう、開発チームに働きかけていきたいです。

編集部:今日は、大変貴重なお話をたくさんお伺いすることができました。ありがとうございました!


ーインタビューを終えて

デザイン思考は、「ユーザーの課題を共感しながら理解する(理解)」「みんなで考える(共創)」「手を動かしながら考える(プロトタイプ)」がもとになっています。

店頭やウェブサイトでお客様に寄り添い、その声を集め、お客様をしっかり観察する。

さまざまなメンバーがいるチームで、意見を出し合い、プロトタイプを作りながら製品に仕上げる。

無印良品のものづくりには、デザイン思考の考え方が染みついている、と感じました。

創業以来のものづくりの考え方が、ブレることなく、脈々と受け継がれているからこそ、実現できている! と感じました。

「 無印良品流デザイン思考」は、ユーザーがこうしたい!を第一に考える、生まれながらの「ユーザー中心設計」でした!
重なお話をたくさん、楽しくお聞かせいただきました。あり...

重なお話をたくさん、楽しくお聞かせいただきました。ありがとございました!