2019/12/03  カテゴリ 

インタビュー

「無印良品流デザイン思考」の秘訣を探る〜ユーザー中心のものづくりを取材してきた!(前編)

デザイン思考を活用して、ものづくりをしている企業を訪問する企画。記念すべき第一回はみなさんご存知の「無印良品」の商品開発に迫ります。

「デザイン思考をみんなのものに!」をモットーに、世の中の「デザイン思考」にまつわるアレコレを取材し、皆さんにお届けしていくインタビューのコーナー。

今回は、無印良品のものづくりを取材してきましたよ。

今や日本を代表するグローバルブランドになった無印良品。
「わけあって、安い。」をキャッチコピーに40品目でデビューした西友のPBブランドが、約7000品目ものラインナップを揃えるほどに成長した背景には、きっと、“わけあって”発展した秘密があるはず。

と思っていたら、「どうやら無印良品はデザイン思考を取り入れているらしい」という記事を拝見。これは、みんデザとして取材しなくては!

さっそく株式会社良品計画さんの本社ビルに潜入。
「無印良品流デザイン思考」「ユーザー中心設計」の秘訣を探ってきました! 
※デザイン思考についておさらいしたい方は、こちらをどうぞ!
みんデザとは?https://mndz.jp/about

あのヒット商品も、お客様とのものづくりから

迎えてくださったのは、今回、開発ストーリーをお伺いする「おむつポーチ」と「母子手帳ケース」の開発に携わった3名の皆様です。

編集部:はじめまして。よろしくお願いします!
左:永澤さん、中:国広さん、右:松木さん。優しい笑顔を...

左:永澤さん、中:国広さん、右:松木さん。優しい笑顔をありがとうございます!

皆さん:よろしくお願いします。
<プロフィール> 株式会社良品計画
永澤 芽ぶきさん:ソーシャルグッド事業部 くらしの良品研究所 課長
国広 美香さん:生活雑貨部 企画デザイン担当ディレクター
松木 寿子さん:生活雑貨部 品揃え・商品開発担当 小物雑貨担当
編集部:さっそくですが、皆さんのお仕事内容を簡単に教えてください!

永澤さん(以下、永澤):くらしの良品研究所で、お客様の声をものづくりにつなげるオンラインコミュニティ「IDEA PARK」(アイデアパーク)というWEBサイトの運営を担当しています。隣にいる松木と国広は、生活雑貨部門で商品開発を担当していて、今日ご紹介する「おむつポーチ」と「母子手帳ケース」を開発したチームメンバーです。

編集部:「IDEA PARK」は具体的にはどのような仕組みなのでしょうか?

永澤:「IDEA PARK」は、大きく2つのコーナーに分かれています。日々お客様から「こんな商品を作ってほしい」と「リクエスト」をいただくコーナーと、より踏み込んでお客様と商品をつくり込んでいく「プロジェクト」のコーナーです。おむつポーチと母子手帳ケースは、「こどもプロジェクト」という企画の中で、お客様と一緒に商品開発に取り組みました。
『IDEA PARK』WEBサイトより

『IDEA PARK』WEBサイトより

編集部:気軽なリクエストと、より踏み込んだプロジェクトの2段階で商品開発に参加できるということですね! どのような経緯で誕生したのでしょう?

永澤:「IDEA PARK」は2014年にスタートしました。無印良品には、開発手法のひとつとして「お客様と一緒に、お客様の声をいかしたものづくり」があります。1990年には「声のキャッチボール」というキャンペーンを行いました。“お客様の声を聞き、店舗のスタッフがメモに控えて本部へ声を上げる”、という取り組みです。
無印良品には、もともと開発手法のひとつとして「お客さま...

無印良品には、もともと開発手法のひとつとして「お客さまの声を生かしたものづくり」がある、と語る永澤さん

永澤:その後、2000年に「IDEA PARK」の前身となる「家具家電モノづくりコミュニティー」を開設し、WEB上でお客様の声を聞き、お客様と一緒にものづくりに取りくむ活動が本格的に始まり、現在に至ります。その間、「体にフィットするソファ」をはじめ、いろいろな商品が、お客様とのものづくりの中から誕生しています。

編集部:「体にフィットするソファ」我が家にもあります!(思わず反応する編集部メンバー)あの絶妙な心地よさはどこから来るのかと思っていましたが、お客様とのものづくりから生まれていたんですね。なんだか、納得です。
体にフィットするソファ。ほんと、人をダメにしてくれます...

体にフィットするソファ。ほんと、人をダメにしてくれます(画像提供:株式会社良品計画)

お客様とのものづくりは、日々の意見の吸い上げと対応から

編集部:お話を伺っていますと、ユーザーの声を吸い上げる仕組みがかなり確立されているように思います。声は「IDEA PARK」に集結されているのでしょうか?

松木:店頭からも、お客様の声を頂戴する仕組みがあります。たとえば、「○○はなくなっちゃったの?」「もっとこうだったらいいのに……」といった、店頭でよく聞かれるちょっとしたお客様の声を、「こんな事例がありました」「○○という声が毎週のように聞かれます」など、お店からの気づきや声として、本部に伝える社内システムがあるんです。そちらも商品開発の参考にさせていただいています。

編集部:それはすごい! 店頭でのちょっとした声を、そのままにせず、社内に共有する仕組みが確立されているんですね。届いた声にはどのように対応するのでしょう?

永澤:毎週月曜の朝にチェックをします。店舗が声を伝えたい担当部署を指定できるようになっていて、それに対し、担当部門が対応方法を検討の上、回答を書き込みます。お客様の声ももちろん、店頭のスタッフから「この販促ツールは使いづらい」などの声も入ってきます。
「毎週月曜日にチェックしています」

「毎週月曜日にチェックしています」

編集部:現場の声も吸い上げ対応する仕組みが、日常的に機能しているのですね。 「IDEA PARK」に届いたリクエストはどうされるのでしょうか?

永澤:「IDEA PARK」に届いた商品に関するリクエストは、見直し中か、すでに販売していないか、などを確認の上、検討してもらう必要があるものは開発の各担当部門に振り分けます。開発の各担当者は、店舗から届いた声と同様に回答を書き込みます。随時「見直し中」「販売中」「できました」等のステータス変更とともに、WEB上でお客様に検討結果のフィードバックも行います。

編集部:ユーザーからの声を吸い上げるだけでなく、フィードバックまでしっかり対応しているんですね!

永澤:店舗への対応も「IDEA PARK」の取り組みも、90年代から今に至るまで形は進化しながらも、基本的には、「お客様の声を聞いてものづくりをしていく」という土壌がある中で、自然と取り組んできているという感覚です。

編集部:まるで、毎日お客様にインタビューしたり、商品のテストをしたりしているようなものですね。「お客様の声を反映させた商品づくり」が、脈々と受け継がれていると感じました。

「こどもプロジェクト」スタート! まずは仮説を立て、検証するためのアンケートを作成

編集部:おむつポーチと母子手帳ケースを、「IDEA PARK」の「こどもプロジェクト」企画でお客様と一緒に商品開発することにしたきっかけは、何だったのでしょうか?

松木:母子手帳ケースは、過去に販売実績があったのですが、販売を取りやめていた時期があり、その間、「IDEA PARK」や店頭に「再販してほしい」という声が定期的に届いていました。

お子様とのお出かけアイテム、をテーマに商品開発をすることになったとき、「やはり、再販を望むお声が多い母子手帳ケースを、もう一度ちゃんとつくってみよう」と。そして、ご要望は多いですが、利用対象者は限られるので「お客様のお声をしっかりと反映してリニューアルをしたい」とプロジェクトを提案しました。
「お客様の声を、きちんと商品開発に生かしていきたい」と...

「お客様の声を、きちんと商品開発に生かしていきたい」と語る松木さん

編集部:開発にあたり、まず「IDEA PARK」の会員にアンケートをお願いしたと聞いています。アンケートの設問はどのように決められたのでしょうか?

国広:もともとチームで、どんな製品を作りたいかの意図をしっかり持っていました。まず、自分たちの気づきをもとに仮説を立てました。チームにいる子育て中の人、昔はこうだったという経験者、そして男性デザイナーからも聞くなど、多様なメンバーの意見をもとにしています。

仮説を検証するにはどういう質問がいいか、精査してアンケートの選択肢を決めました。フリーコメントだけでは検証ができないので、検証をしやすいアンケート選択肢を作るのに相当時間をかけました。

編集部:具体的にはどういった仮説を立てたのでしょうか?

松木:母子手帳はお母様とお子様のものというイメージがあります。でも、実際の利用シーンでは、男性が持ち運ぶこともありますし、祖父母の場合もあります。しかし、よくある母子手帳ケースは可愛らしい柄が多く、男性が持つにはためらわれるデザインです。おむつポーチであれば、抱っこをしながら持ち運んだり、ポーチを開けたりする事も多く、また子育て中は何かと荷物も多くなりがちです。

ですので、男女や年齢を問わず持ち運びができ、「軽くて」「コンパクト」そして「子どもを抱っこしながらでも使いやすい」仕様にしたいと思っていました。

また、お客様から届いていたご意見、たとえば「複数の子どもの分をまとめて入れられたら」などをピックアップしました。ただ、それはごく少数の方の声だったので、多くのお客様の意見を頂戴したい、と設問項目に追加しました。
商品開発の過程を話してくださる皆さん。想いが伝わります

商品開発の過程を話してくださる皆さん。想いが伝わります

編集部:デザイン思考のプロジェクトでは、ユーザが求めるモノの仮説を立て、その仮説を検証するために利用者にインタビューをします。無印良品さまも仮説検証を、しっかりと計画されていると感じました。

ー注目のアンケート結果とおむつポーチと母子手帳ケースの完成品はいかに? 後編では、この後の開発ストーリーと完成品を大公開! そして、無印良品のものづくりの秘訣に迫ります。