2020/07/10  カテゴリ 

きいてみた!

楽しみながら改良を続ける! デザイン思考な日本のモノづくりを取材してきました!

デザイン思考な企業を取材しお届けするシリーズ企画。今回は、ピンチをチャンスに変えた日本のモノづくり現場をご紹介します!株式会社新上さんにインタビューをしました。

こんにちは、みんデザ編集部です!
今回は、日本のモノづくり現場のご紹介です。

ある日のこと。メンバーの新上からこんなメッセージが。
「僕(新上)の名字と同じ名前の会社を発見。しかもデザイン思考でモノづくりをしているらしいのです。」

「なにそれ、おもしろい!」

さっそくホームページを拝見。ほんとだ、「システム思考とデザイン思考で『おもしろいモノづくり』を追求」って書いてある!
(株式会社新上オフィシャルホームページより)

(株式会社新上オフィシャルホームページより)

どんなふうにデザイン思考を取り入れているのでしょう? 
気になります。さっそくお話を伺ってきました!

プラスチック射出成形って何ですか? 

迎えてくださったのは、 曽我部大社長(以下:曽我部社長)と、企画営業の曽我部光さん(以下、光さん)です。よろしくお願いします!
左:代表取締役の曽我部社長、右:企画営業の曽我部光さん

左:代表取締役の曽我部社長、右:企画営業の曽我部光さん

<会社概要>株式会社新上(Shinjo Co., Ltd)
代表者名/曽我部 大、所在地/【本社工場】千葉県柏市正連寺272-1中央8街区4、 設立/1962年03月21日、従業員数/30名、事業内容/プラスチック射出成型、商品開発、設計、デザイン、グッズプランニング
――みんデザの“新上”です。この度は“新上”さんにお伺いできて光栄です!(前のめりで嬉しそう)さっそくですが、まずは御社の事業内容を教えてください。

曽我部社長:遠いところをお越しいただきありがとうございます。株式会社新上は、プラスチック製品の製造(射出成形)会社です。商品開発、デザイン、グッズプランニングもしています。祖父の代に墨田区向島で創業して56年、私で三代目になります。

――「射出成形」とは、どういったものでしょうか?

光さん:「射出成形」は、溶かしたプラスチックに圧を加えながら金型に「射出」して製品を作る工法です。日常生活で使うプラスチック製品の多くが、この方法で作られているんですよ。
射出成型機とは、こんな機械です!

射出成型機とは、こんな機械です!

――製品としてはどのようなものを作られているのですか?

曽我部社長:メインは家庭雑貨です。うちはちょっと特殊で、どちらかというとデザイン寄りのものが多いですね。写真は残念ながらNGですが、たとえばこんなのとか......(実際の商品を見せながらご説明くださる)、ブラシやお掃除グッズでも、デザインをちょっとよくしたい、という相談が多いです。

――これはインテリアとしてもいいですね。なぜ、新上さんにはデザイン雑貨の相談が多く来るのでしょうか?

曽我部社長:たとえば、多くの成形品が厚さが1ミリから3ミリくらいです。それくらいの厚みがプラスチック成型の主流なんです。デザイン性を出そうとすると厚みが出やすいので、普通の成形メーカーはあまりやりたがりません。そして、私はもともと玩具デザインをやっていたので、デザイナーの意図を汲み取りやすいのかもしれません。

――なるほど、それで新上さんに話が多く来るんですね。なぜ、厚みがある成形は敬遠されるのでしょうか?

光さん:厚みを出そうとすると、気泡が入ってしまったり、「ひけ」と呼ばれる成形工程のへこみがでやすかったりするのです。つまり、不良品になりやすいのです。手間もかかりますし、なかなか難しいと思います。

飽くなき探究心の積み重ねが、大きな変化を生む

――厚みのあるプラスチック成形は手間もかかり、どこもあまりやりたがらない。なぜ、新上さんでは対応しているのか。もう少しお伺いしたいです。

たとえば、こちらのバードコールは、厚みがあるというより……もはやまんまるですよね。ホームページで拝見して、プラスチックでこんなものまで作れるのかと正直驚きました。これはどのような経緯で製作されたのでしょうか?
しっぽを軽くこするように回すと、鳥のさえずりに似た音が...

しっぽを軽くこするように回すと、鳥のさえずりに似た音が出せる“バードコール”。とてもクリアで、最初はガラス製かと思いました。

曽我部社長:これは、見本市での商談で、この人(光さん)が「できます」って答えてきちゃったんですよ。

光さん:答えてきちゃったというか……(笑)これは関西のクライアントさんからのオーダーです。関西圏の成形会社さんには軒並み断られたそうで、見本市でご相談があり「うちならできると思います」と答えました。

――なぜ、できると自信を持って言えたのですか?

光さん:日頃から、厚みのある製品を試行錯誤して作ってきましたし、ノウハウも蓄積されていますので「うちならできるだろう」と思いました。

曽我部社長:以前、ある製品を作ったときに、材料メーカーさんが「本当にそんな厚さでできるのか?できるのなら見せてほしい」と製造現場に来られたこともありました。そのくらい、厚みのあるものは難しくて、10社のうち9社は断ります。でもやろうと思えば誰でもできるんですよ、機械さえあれば。

――でもやらないのはなぜでしょうか。

光さん:手間がかかりすぎると思っている方が多いと思います。やり方がわからないという場合もあると思うんですけど......。

曽我部社長:うちはどんな相談でも、クライアントとディスカッションを重ねながら、まずは「どうしたら形にできるか」を考えます。もちろん技術的に無理なことはしっかり伝えますが、「デザイナーの意向をくみ取り、成形側のアプローチからデザインを実現できる方法を提案する」、それが新上の基本スタンスです。

――制約があるなかで、対話を重ねて、お客様が求めるアイデアの実現を共に探求する......まさに「デザイン思考」ですね。

曽我部社長:「デザイン思考」は学問として勉強したわけではないのですが、もともと当たり前のものとしてやってきています。「デザイン思考」という言葉をよく耳にするようになり、調べてみたら「これ、うちでやってる事だよね?」と。

――「お客様のニーズを実現しようとする“姿勢の積み重ね”」が、大きな違いを生み出しているように感じます。

曽我部社長:おっしゃる通りです。たとえば20年ほど前、お客様から「一色を500個ずつ作りたい」などの要望が出始めました。プラスチック射出成形は、もともと何百万個も作らないと採算が取れないビジネスモデルでしたから、当然、どこもやりたがりません。でも、私は「これからは細かなニーズに対応していかないとダメだ」と現場を説得し、お客様の声に対応していきました。

そして、気が付いたら肉厚ものが得意になり、透明ものが得意になり、少ロット生産も得意になっていました。時代の変化で成形メーカーもだいぶ減りましたが、私たちはおかげ様でこうして事業を続けられています。まさに、お客様に鍛えられました。

――「お客様に鍛えられた」いい言葉ですね。技術者たちとのやり取りも、いろいろと大変だったのではないでしょうか。

曽我部社長:それはもう戦いでしたね。大げんかしながらやってましたよ(笑)

光さん:でも今では、金型メーカーさん(成形用の型を作る人・会社)が知恵を出してくれるようになりました。「形を活かすための金型をどうつくるか」を一緒に面白がりながら作っています。

曽我部社長:難しい製品が多いので、現場のスタッフには怒られるんですけどね(笑)

光:同業の仲間からも「難しいのは新上さん」と話がまわってきたりします。

――それは立派なブランディングですね!

考え方の原点は「これが嫌!をなくす」「視点を変える」「面白がる!」

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