2019/09/01  カテゴリ 

みん読(みんなで読書)

ゆるく楽しく繋がり学ぶ。大人のアクティブ・ラーニング「実践コミュニティ」を作ってみよう!

ナレッジ・マネジメントにつながる実践コミュニティ立ち上げまでのステップ

みなさんは自分が所属している会社の組織図を見たことがありますか? 経営陣が上にいて、その下に各部署が枝分かれして配置されている、どこの会社もたいていはそんな感じの図だと思います。
ではでは、あなたの会社には、その組織図に載っていない組織・集まり・コミュニティはありますか?

パッとは思いつかないかもしれませんが、たとえば部活や、同期の仲間たち、喫煙スペースに集まる人たちなどなど。よーく目を凝らしてみると、ありますよね。組織図に載っていない「非公式コミュニティ」!

実は今、この非公式コミュニティのなかの「実践コミュニティ」というタイプのものが、会社を存続の危機から救ったり、売上や製品開発に貢献するなど大活躍しているそう。“非公式”なのにどういうこと??

そんな「実践コミュニティ」の事例や作り方が紹介されているのが本書『コミュニティ・オブ・プラクティス』。
「毎日の通常業務だけじゃつまらない」「もっと会社を楽しくしたい!」と思っているあなた! せっかくならこれを読んで、社内で「実践コミュニティ」を立ち上げてみるのもいいかもしれません!

時には経営危機も救う、非公式コミュニティ

一見会社の事業とは無関係に見えるこの非公式の集まりですが、なんとこの存在が経営危機を救った事例もあるんです!

今から数十年前。クライスラーというアメリカの車メーカーのお話です。
1980年代のクライスラー(現在のダイムラー・クライスラー)は、日本の車メーカーにシェアを奪われ続け、経営危機に陥っていました。

当時の組織体制は、「設計部」「技術部」「製造部」など機能単位で分かれていました。この構造だとそれぞれの部門が自分たちの分野のことしか考えられず、生産にあたって部門間を何度も出し戻しをするため、新製品の発売サイクルが遅くなっているのが課題でした。
日本のメーカーが3年程度で新車を発売するなか、クライスラーは5年くらいかかっていたんです。そりゃ負けちゃいますよね……。
従来の組織体制

従来の組織体制

そこで、開発サイクルを短くするために組織改革を行い、「大型車」「小型車」「トラック」などの車種別の組織体制に変えました。すると、これまで自分の担当する工程しか見えていなかった社員たちが、開発全体のことを考えて仕事ができるように。無駄な出し戻しもなくなり製造までの流れもスムーズになって、なんと2.5年程度で新車を販売できるようになったのです! めでたしめでたし。
組織改革後の体制

組織改革後の体制

しかし今度は、同じ部品でちょっとずつ形状の違うバージョンがたくさんできてしまったり、違う車種で同じミスが繰り返されたなどの問題が発生するようになってしまいました。車種ごとの組織になったことでエンジニア同士や設計士同士などの横のつながりがなくなったのが原因でした。

つまり、ビジネスの全体像を把握できる縦のつながりと、同じ分野同士の横のつながりのどちらも必要ということなんですね。

こんな状況のなか、現状に危機感を感じたもともとの組織である「設計部」「技術部」などの同僚たちが、それぞれに集まってざっくばらんに情報交換するようになったのです。

この集まりこそが、本書のテーマである「実践コミュニティ」。
経営陣が計画したわけでもなく自然発生したこの集まりで、助け合ったり新しい発見を共有したり研究したりしていくことが、倒産の危機を乗り越えるきっかけになりました。
実践コミュニティで縦横で繋がる組織が実現

実践コミュニティで縦横で繋がる組織が実現

そのうち会社側もこの集まりを非公式に認可し、支援するように。「テック・クラブ」と呼ばれる横のつながりは、現在100以上も誕生しているそうです。

そしてこれと同じような事例が、今世界中で起きています。世界銀行やシェル石油、マッキンゼーなど名だたる企業や組織が、実践コミュニティを活用しているらしい。

本当の競争力は、「文書化できない知識」のなかに宿る!

そんな実践コミュニティですが、中ではいったい何が行われ、そこに参加するメンバーに何が起きているのでしょうか。本書にとてもわかりやすい例えが載っていました。

—本文より引用―
あなたがもし友人に「外科手術に関する本をたくさん読んだから、頭の手術をしてやろう」などと言われたら、もちろん礼儀正しく断るだろう。外科医は患者を手術する際、書物から得た知識や、頭の中に入っている手順をやみくもに適用するわけではない。患者の病歴を考慮し、血圧や心拍数などをモニターし、細胞組織を目で確かめ、切開し、結論を引き出し、そしておそらくは変わりゆく状況に対応した処置を取れるよう、計画を修正していくのである。このように、専門的技術を積極的に動員することは、蓄積された知識それ自体と同じくらい重要な、能動的かつ創造的プロセスなのだ。
—引用ここまで―

まあつまり勉強も大切だけどそれだけじゃできるようにはならないよね、ということですよね。で、知識を得てからできるようになるまでの部分、これは文書化することができない知識で、「暗黙知」と言われています。逆に文書化できる知識を「形式知」といいます。

形式知は文書化して公開すれば瞬時に世界中の人が知ることができますが、暗黙知は文章やツールで伝えることができません。
これを共有するには、“同じような状況にいる人たちとの相互交流”が必要なのです。それをできる場が本書のテーマでもある実践コミュニティ!

現在日本の学校教育でも導入されつつある「アクティブ・ラーニング」もこの暗黙知を学んで行くためのもの。実践コミュニティはまさに大人のアクティブ・ラーニングなんですね!

学ぶ!→やってみる!→共有する!の繰り返しが会社全体の競争力に

なぜ今、この暗黙知を学び合う場がビジネスの世界で注目されているのでしょうか? 上の例のような手術現場以外でも、ビジネスの現場ではこの暗黙知が必要なシーンはたくさんあります。むしろビジネスで競合他社と差をつけるには、この暗黙知をいかに持っているかが重要なのです! なぜなら文書化できる形式知はすぐ真似できちゃうから!

「じゃとにかく1人でガンガン実践していけばいいじゃん!」と思うかもしれませんが、社会で価値を発揮できる暗黙知は、ものすごい量でどんどん増加し、変化していきます。どんなに優秀な社員でも、急速に変化する今の時代に1人で暗黙知を構築し続けるのは不可能なのです。というか、みんなでやったほうが俄然効率的。みんなで知識を創り出していくことが、今の時代に大事なこと。これってデザイン思考にもある“共創”ってやつですね!
そして、こうした知識の創出や発展を重要視する経営を「ナレッジ・マネジメント」といい、変化する時代に必要な手法と言われています。
常に新しい知識を創り出していく力があり、それを組織全体に広げて、製品やサービスを作ったり改善できる会社が、価値を出し続けられるのです。

普通の組織づくり全然違う、実践コミュニティの作り方

なんか難しそうなことをたくさん書いてしまいましたが、わざわざ学校に行かなくても知識を創り出せる実践コミュニティ。それが仕事にも役立つかもなんて、超お得ではないですか? 作りたくなってきましたよね? 会社の公式の組織を作るのはめちゃくちゃ大変(知らんけど)ですが、非公式だからあなたにも今すぐ作れます! 大丈夫、非公式だから失敗したって痛くもかゆくもありませーん!

ここで、実践コミュニティのポイントをご紹介。普通の組織作りと何が違うのでしょうか。
<実践コミュニティのポイント>
①目標を定めて達成するのではなく、活気を生み出すことを大切に!
②構造や役割の設計よりも、活気のもととなる相互交流を促すことを重視!
③最初に決めつけすぎない、変わってくものだと思ってやる
④メンバーが同じ目的意識を持つ必要はなく、参加する人の目的はバラバラで良い(学びたい、繋がりたい、暇だから来た、でもなんでもOK!)

どうでしょう、普通の組織よりも固まってなくて、柔軟。これなら楽しく始められそう!

ナレッジ・マネジメントにつながる実践コミュニティ立ち上げまでのステップ

お次は実践コミュニティ立ち上げのステップをご紹介します。
ステップ1:コミュニティのテーマを決めよう
学んでいくテーマになりそうなものを探してみよう!
・まわりの人たちが関心を持っていることで、その人たちが普段の現場で実践できること
・さらにそれが会社の抱える課題だったりすると、事業に役立つ可能性があるのでよい(会社から支援してもらえたりしたら最高)

たとえばなかなか導入に踏み切れていない新技術とか、チームビルディングとか……? もちろん自分も「楽しそう!学んでみたい!」と思えるものが良いですよね。社内のよく話すメンバーが気になっていることからヒントを探してみよう。

その2:コミュニティが活性化する取り組みを模索しよう!
実践コミュニティの形はさまざま。最初から大々的にキックオフイベントを開催するケースもあれば、まずは小さな集まりから始めるケースも。人数も何百人もいる場合もあれば、10人程度のものも。

「こういう形でいきます」と決めつけるのではなく、新しい人たちがどんどん入ってきて活性化することをすることを大切にしよう。はじめは数人でテーマについて話し合うだけでもいいと思います。そのうち講師を読んだりワークショップをしてみたり、形を変えながらやり方を模索していきましょう。ケースとしては、定期的な会合やイベントを継続するパターンに落ち着くことが多いそうです。

本書には「成功しているコミュニティは、メンバーにとって安心する場所であり、同時に興味を引く変化に富んだイベントが色々と行われ、また新しいアイディアや新しい人々が流入し続けている場所でもある」とあります。要は「サードプレイス」なんですね。地元の行きつけのバーのように、利害関係がなく気軽に立ち寄れる場所を作ることを心がけましょう!

実践コミュニティにおける自分の役割はリーダーよりも“コーディネーター”

みんなが自発的に参加する、でもただのお友達の集まりではない、きちんと学んで繋がっていくコミュニティ。運営するにあたって、中の人はどう立ち回るべきでしょうか。従来の組織で重視されるのは目標に向かって引っ張っていくリーダーですが、実践コミュニティの要となるのは、“コーディネーター”という役割です。

いつも飲み会やイベントを企画して誘ってくれたり、目立つ意見を言うわけではないけど会議にいるとなんだか盛り上がる、そんな人部署やチームに1人はいますよねー。それがコーディネーター的なお仕事。

自分がいないところでもメンバー同士が繋がっていくように機会を作ったり、イベント終了後に参加者に連絡してフォローしたり。普通の業務では数値化されづらい価値ですが、組織や決まりごとの壁を超えて、人々を繋げ、交流させ、その場を活性化させる実践コミュニティでは非常に重要な役割なのです。
急速に変化していく時代に企業が柔軟に学び、繋がり、進化していくためには、コーディネーターの存在はこれからもっともっと必須になってくるかもしれません。

実はみんデザも実践コミュニティ!

さあやってみよう、今すぐ始められる実践コミュニティ。きっとこれこそ勉強するよりやってみたほうが掴めるものが多いはず!

実は私たち「みんなのデザイン思考」も実践コミュニティなのです。デザイン思考をテーマに学び合いながら、メンバーはそれぞれのフィールドで実践しています。
みなさんが参加できるイベントも各種開催していますので、「デザイン思考に興味がある」「実践コミュニティの運営を見てみたい」「多様な人と知り合いたい」など、どんなきっかけでもかまいませんので、是非参加してくださいね(最後宣伝になってしまってごめんなさい)!
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