2020/07/31  カテゴリ 

よんでみた!

デザイン思考のバイブル『デザイン思考が世界を変える』のアップデート版を読んでみた!

今回は、デザイン思考のバイブルと言われている、ティム・ブラウン氏の『デザイン思考が世界を変える〔アップデート版〕:イノベーションを導く新しい考え方』を読んでみました。

こんにちは、みんデザ編集部です。
今回は、デザイン思考のバイブルと言われている、ティム・ブラウン氏の『デザイン思考が世界を変える〔アップデート版〕:イノベーションを導く新しい考え方』を読んでみました。

この本の初版はなんと2009年!日本では2010年に初めて翻訳版が刊行され、2014年には文庫版も発売されています。初版から10周年を記念し、本書は新たに11章が加筆され、さらに本篇の内容も一部修正が加えられたアップデート版です。ティム・ブラウン氏の10年間の経験をもとに、最新事例などが盛り込まれ、デザイン思考の進展と今後の展望を知ることができます。

ティム・ブラウン氏とは?

原著者のティム・ブラウン氏は、世界的デザインコンサルティング会社IDEOの最高経営責任者(CEO)。「デザイン思考」の伝道師とも呼ばれ、企業の組織改革や、病院・大学・NPOのサポートなど、世界のさまざまな社会問題の解決に取り組まれています。IDEOは、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)と強固な関係を築いており、ティム・ブラウン氏はその功績が高く評価され、2018年には名誉博士の称号を授与されました。日本のデザイン思考の進展にも尽力されている、まさにデザイン思考の“伝道師”です。

『デザイン思考が世界を変える』で伝えようとしたこととは?

ティム・ブラウン氏が、初版『デザイン思考が世界を変える』で伝えようとしたことは、シンプルに“2つ”のことだったそうです。ひとつ目は、人間中心の創造的な問題解決アプローチであるデザイン思考は、ビジネスや社会課題に対して、より効果的で斬新な解決策を期待させるということ。ふたつ目は、デザイン思考は、その考え方や方法論を習得したいと思っている人なら誰にでも実践できるということ。
デザイン思考は誰にでも実践できます!

デザイン思考は誰にでも実践できます!

「誰にでも実践できる」というのは心強いですね!それでは、デザイン思考の基本的な考え方を本書の中から少しだけご紹介します。

イノベーションの3つの空間

デザイン思考のイノベーションは、以下の3つの空間からなるシステムとして考えられています。

・着想(Inspiration)
・発案(Ideation)
・実現(Implementation)

そのプロセスは直線ではなく3つの空間を行き来するため、一見すると余計な時間がかかってしまうと思われがちです。しかし、デザイン思考のチームは、1日目からプロトタイプを製作し改良を重ねていくため、結果として「早めの失敗は成功への早道」となるそうです。

プロトタイプ製作は、初期の段階から開始し、すばやくたくさん作製することが重要です。初期のプロトタイプは、「着想」を与えるため、ボール紙や接着剤、テープなど身近なものを使ってラフに作ります。そして、「発案」では、アイディアを形にして市場のニーズを満たしているかを確認するために製作し、「実現」では、実証する場面で役立ちます。このように、イノベーションの各空間にプロトタイプ製作を取り入れ、3つの空間を自由に行き来することが重要だそうです。
初期のプロトタイプ製作では、ボール紙や接着剤、テープな...

初期のプロトタイプ製作では、ボール紙や接着剤、テープなどを使います

さらに、サービスや組織システムなどのプロトタイプ製作では、実体がないため演技をすることもあるそうです。計画書を書くような抽象的思考はもちろん必要ですが、具体的で新しいアイディアを生み出すプロトタイプ製作は、イノベーションにおいて非常に効果的だと考えられています。

イノベーションの3つの制約

イノベーションの3つの空間は、オープンエンドですが、もちろん制約もあります。以下の3つの制約をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに受け入れることが、デザイン思考の基本になります。

・技術的実現性(Feasibility)
・経済的実現性(Viability)
・有用性(Desirability)

技術的に実現できるか(技術的実現性)、持続可能なビジネス・モデルか(経済的実現性)、人々にとって合理的で役立つか(有用性)。この3つの制約を、むしろ成功するアイデアの3条件として捉え、そのバランスをとることこそが重要だそうです。

成功するデザイン・プログラムの3要素とは?

デザイン思考は「人間中心」アプローチです。人々が自分でさえ気づいていない内なるニーズを明らかにすることがイノベーションにつながります。そのためには、どのような手段が必要なのでしょうか?成功するデザイン・プログラムとして、ティム・ブラウン氏は以下の3要素に注目しています。

・洞察(Insight)
・観察(Observation)
・共感(Empathy)

「洞察」とは、他者の生活から学ぶこと。デザイン思考では、「人と製品との関係の分析」だけではなく「人と人の関係の分析」も重要です。そして、「観察」では、人々のすること(しないこと)に目を向け、言うこと(言わないこと)に耳を傾けます。観察は数日間、数週間、場合によっては数ヶ月にわたって行われ、さらに観察対象の人々とつながる段階が「共感」です。共感を通して他人の身になることで、新たなニーズが明らかとなるそうです。

発散的思考と収束的思考

デザイン思考のプロセスは、発散的思考と収束的思考をリズミカルに行き来します。発散的思考の手法としては、ブレインストーミングやビジュアル・シンキングが紹介されています。こうした手法により、発散的プロセスでは、多くの選択肢が生み出されます。

一方、そのようにして生み出された選択肢を絞り込むためには、収束的思考が重要になります。そしてこの収束的プロセスで役立つ道具が、ポスト・イットです。ワークショップなどでポスト・イットを使いブレインストーミングをした経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。すでにデザイン思考を実践していたのかもしれません。

とはいえ、それでも「デザイン思考ってやっぱりなんだかよくわからない・・・」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。そんな時こそ、「誰にでも実践できる」というティム・ブラウン氏の言葉を思い出してみましょう。

収束的思考にはポスト・イットが役立ちます

収束的思考にはポスト・イットが役立ちます

デザインをデザインし直す

最後に、今回新たに加筆された11章について、ほんの少しだけご紹介します。

ティム・ブラウン氏は、現在の社会の変化を“第四次産業革命”と呼び、過去の蒸気(第一次)、電気(第二次)、コンピューター(第三次)による革命と比較すると、その変化はめまぐるしく、想像を絶する規模で進んでいると指摘しています。そして11章では、私たちの直面している社会課題のうち、特に緊急性の高い以下の6分野に関して、現実的な戦略を述べています。

① 時代遅れになった社会システムの再デザイン
② 参加型民主主義の復興
③ 脱自動車時代の都市のデザイン
④ 人間に優しい人工知能、スマート・マシン、ビック・データのデザイン
⑤ バイオテクノロジーや人間の誕生と死にまつわるデザイン
⑥ 線形経済から循環経済への転換

まとめ

世界はまさに今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という新たな社会課題に直面しています。これまでの生活様式や価値観が変化するなか、新たなイノベーションが求められているといえるでしょう。そんな今だからこそ、人間中心アプローチであるデザイン思考から学ぶことは多いのではないでしょうか。

すでに初版を読んだことがある方も、まだ読んだことのない方も、デザイン思考のバイブルとして何度も読み返したくなる1冊です。本書が、読者の皆様にとって、日々の生活にデザイン思考を取り入れる一歩となることを願っています。私も自分のできることから、学んだことを実践してみたいと思います。
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