2020/04/24  カテゴリ 

やってみた!

吉成雄一郎氏によるデザイン思考キャンプレポート【後編】

デザイン思考の総本山、スタンフォード大学d.schoolの社会人プログラムを修了した吉成雄一郎さんによるデザイン思考キャンプレポート後編です。

※本記事は2019年11月に開催したイベントのレポートです

最近記事が更新されないなーと思っている読者の皆様、ご無沙汰しています!みんデザ編集部の保手濱です。
今回はみんデザで開催した「デザイン思考講座」の後編をお届けします。随分間があいてしまいごめんなさい(土下座)。
前編はこちら
講師はデザイン思考の総本山、スタンフォード大学d.schoolの社会人プログラムを修了した、大手総合商社のシリコンバレー支店に赴任されている吉成雄一郎さん。日本に一時帰国したところにすかさず登壇をお願いした今回のデザイン思考キャンプです。
講師の吉成雄一郎氏

講師の吉成雄一郎氏

【学歴】
早稲田大学理工学部機械工学科卒、同大学院理工学研究科機械工学専攻修了(工学修士)、
早稲田大学大学院ビジネススクール修了(MBA)、 早稲田大学大学院社会科学研究科 博士後期課程 在学中
スタンフォード大学 d.school Design Thinking Bootcamp fro Executiveプログラム修了( non-degree)
スタンフォード大学経営大学院  The Corporate Entreprenuerプログラム修了( non-degree)

【略歴】
1996年大手総合商社入社、宇宙航空機部に配属。人工衛星ビジネスを経て、日本オラクルと提携した位置情報サービス会社「ジクー・データシステムズ㈱」を 2002年に創業。同社を 7年間経営の後、金属資源部門に異動。オーストラリア・ブリスベンに Vice Presidentとして4年間駐在。その後、 2年間の東京勤務を経て、2016年よりシリコンバレーに駐在。 AI, IoT, BlockchainのPOCプロジェクトやスタートアップ投資(CVC)を主導。加えて、デザイン思考のコーチとして、社内外延べ 30クラス以上900名以上にデザイン思考のトレーニングを行っている。
講師である吉成さんから
・これからの時代、企業が生き残るためはイノベーションが必要
・そのイノベーションを起こすための方法のひとつが「デザイン思考」
・デザイン思考は「ユーザー視点」に立つこと
・デザインは「現状否定」が語源。イノベーションは「組み合わせ」で生まれる!
といったことを学んでいきました。

後編では、デザイン思考のプロセスを体験しながら学んだ様子をご紹介します。

デザイン思考のプロセスをおさらい

おなじみのこのデザイン思考のプロセス。覚えてるかな?

おなじみのこのデザイン思考のプロセス。覚えてるかな?

前編の最後でご紹介した、デザイン思考のプロセス。
実際に製品やサービス開発などをする際以下のように繰り返しながらやっていきます。
実際はこんな感じだよ!というのを学びましたね

実際はこんな感じだよ!というのを学びましたね

プロセスその①「共感」とは「感情に着目する」こと

デザイン思考の5ステップの中で、一番重視しないといけないのはこのファーストステップである「共感」。
ここをちゃんとしないと次のプロセスがうまくいかなくなってしまうんですって。

でも「共感」ってなんだろう?
「わかるわ、わかるわー」っていうことだろうけど、どうしたらユーザーの目線に立って「わかるわかるー」となるのでしょうか。

モヤる参加者一同に対して、吉成さんがポイントを伝授してくれました。
それは、「感情に着目する」ということ。

普段のビジネスや業務って「論理」で判断することが大切で、「感情」を出すのってあまり良いこととはされていませんよね。
ですが、デザイン思考では「感情」が大事。

これはなぜかというと、仕事でも何でも、人間の意思決定の95%は右脳(感情)で決めているそうなのです!
え、逆では?左脳(論理)でものごとを決めてるんじゃないんですか??と思うのですが、
左脳は「ラショナライゼーションブレイン(理由付けの脳)」と呼ばれているそうで、右脳が感情で決めたことを左脳が論理で理由を後付けしているんだそう。知らなかった!

やってみよう!自分の感情に着目するワーク

実際に「感情に着目する」というのをやってみよう!
二人組になってワークのスタートです。
テーマは「自分の名前について」です!

まずはそれぞれコピー用紙にこんなグラフを描きます。
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ここでのポイントは、「感情」に着目して会話を進めていくことで、それにまつわる「ストーリー」が出てくること。
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これは感情の上がり下がりを指すグラフ。
二人でお互いの名前の由来や、これまでの人生で名前で良かったこと、嫌だったことを、感情の上がり下がりのグラフにしてみよう!
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デザイン思考で何かを作ったり直したりするときには、「ストーリーを掘り起こしていく」ことがとても大切。
モノやサービスを使ったときに、ユーザーがどういうストーリーを描くのかを見つけるのです。
発表ターイム。名前にまつわる思いもよらないストーリーが...

発表ターイム。名前にまつわる思いもよらないストーリーが頻出しました!

これはなぜかというと、人間の脳は「ストーリー」に反応するようにできているそう。
ストーリーがあるからこそ、人々の記憶に残るものになるのです。

文字がなかった時代には、次世代に残さなければいけないものは全部ストーリーを紡いでいました。だから世界中で民話が語り継がれているのですね。

そして、この「ストーリー」をどうやって掘り起こすかが「共感」の第一歩だそうです。

他にもペルソナを作ったり、ユーザーインタビューするなどの手法があります。
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このあたりは「UXリサーチャー・樽本徹也さん」の記事にもありましたね!

プロセスその② 問題定義の際の注目ポイント

次のステップに進みましょう。2つ目のステップ「問題定義」です。
私たちはイノベーティブなものを作り出すために、どんな問題を解決するべきなのか?を考えていきます。

その時に注目するべきは、「エクストリーム・ユーザー」。
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平均的なユーザーよりも、極端なユーザーを探してみると、革新的なアイデアが隠されている可能性が高いといいます。

ちょっと想像がつきませんが、例えばMacBookの話。
MacBookの表面は、原価50円ほどでできる一般的なプラスチックのプレス加工ではなく、なんと原価1万円ほどもするアルミの削り出し加工がされています。

これ、平均的なユーザーにインタビューをすると、「安い加工のほうがいいに決まってる」となるところを、スティーブ・ジョブズという極端なユーザーの美的感覚で作られたものが、平均的なユーザーを取り込んでしまったという事例です。


また、解決するべき問題を決める際のもうひとつの注目ポイントは、「機能」より「体験」。
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日本企業が作るプロダクトは、「スペック」に注目しがちですが、ユーザーに提供するべきは「いい体験」。

人はいい体験をすると忘れられず、「もう一回やりたい」と思うようになります。
これは「共感」プロセスでもありましたが、ロジックではなく「感情」の部分。

例えば、iPhoneが発売してから一世を風靡したのはスペックではなく、「スワイプの気持ちよさ」。一度体験すると、ボタンを押すガラケーには戻れないのです。
いい体験はスペックを凌駕する。覚えておきたい名言です。

プロセスその③ 発想・アイデア出し

出ました、デザイン思考の醍醐味、アイデア出し!
ポイントいろいろ

ポイントいろいろ

出ました、デザイン思考の醍醐味、アイデア出し!
ポイントをかいつまんでご紹介します!

心理的安心感
人のコミュニケーションは、主に目で行います。その場にいる人々が、目を合わせられる関係性になってるか?
心理的安心感を作ろう。リラックス、リラックス。

どんなときも否定しない!「Yes, and」の精神で
否定されるとアイデアは出てきません。
「Yes,and」とは、「○○しませんか?」と聞かれたときに、「いいね、じゃあ〇〇はどう?」と返すイメージ。逆は「いいけど〇〇だからなあ」と否定で返してしまうこと。

「Yes, and」で返していくと、「AだったらB、BだったらC…」と連鎖反応が起こります。
こうしていくと、最初に思ってたことと全然違うことが出てきます。これが大事!

とにかくたくさん出そう!
アイデア出しの段階では、まずは質より量!
選ぶのはあとでいいからとにかく出そう!アイデアは予測つかないもの。身を任せて、乗っかってみよう!

アイデア出しをやってみよう!

以上のことをふまえて、実際にアイデア出しをやってみましょう!
吉成さんがお手本を見せてくれました。
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「ねえねえ、明日どこか遊びに行かない?」
「いいねえー!じゃあさ、車借りてくるよ!」
「いいねえー!じゃあ海にでも行かない?」
「いいねー!」
と続きます。
見ているこちらも楽しくなります

見ているこちらも楽しくなります

逆にこれが
「ねえねえ、明日どこか遊びに行かない?」
「いいけど明日寒そうだからなあ」
と返してしまうと、アイデアが広がっていきません。

とにかく相手を信じて、前向きに、流れに身を任せてどんどん出す!
やってみました。否定されないって気持ちいい!

やってみました。否定されないって気持ちいい!

ノッてきたところで、更にやってみましょう!
お次のテーマは、「クリスマスパーティーのアイデアを考える」

まずは3つのアイデアに分けて出していきます。
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1つ目は、「1億円以上かかるアイデア」
2つめは、「あなたの上司が怒らせちゃうアイデア」
3つめは、「魔法を使うアイデア」

二人組に分かれて、1つ目からそれぞれアイデアを出しまくります!スタート!
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単に「面白いクリスマスパーティーのアイデアを考える」ではなく、こうして3つの条件を出すには理由があります。
それは、ホースをつまむと水が勢いよく広がるように、制限を加えることでアイデアの幅を広げるため。
条件を付けるコツは、「1億円まで」ではなく「1億円以上」にすること。発散させるための制限なのです。

さてさて、みんなたくさんアイデア出たかな〜?
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「シャンパンタワー」のようなゴージャスなアイデアから、「家を燃やす」など不穏なものまで(笑)、たくさん出ましたね!
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お次はこのたくさん出たアイデアを絞り込みます!
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絞り込むポイントは3つ。
Q…すぐできるアイデア
B…難しいかもだけど革命的なアイデア
D…楽しいアイデア


アイデアを絞り込むときにやってはいけないのは、評価基準で採点すること
一定の評価基準を設けて選ぶと、平均的なアイデアが選ばれてしまいます。これでは本末転倒。
ややあいまいさを残しながら多面的に候補を絞っていきましょう。
そして、自分で選ぶのは候補を絞り込むところまで。最後はユーザーに選んでもらうのがベストです。

今回はユーザーがいないため、それぞれから3つを選び出し、最も良さそうな組み合わせにしたものを発表しました!
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各チームから出てきたアイデアは、
魔法で氷の城を作りましょう
カントリークラブ貸切したり、某有名女優が会いに来たり、
潜水艦の中で開催したり、各国の一番の美女を呼んだり
カラフルな人工雪を降らせたり、上司の家を燃やしたり(笑)
町中の人を招待したり、降った雪が自然とアート作品になってそれが食べられたり!
ロケットを発射したり、一週間ぶっ通しでやったり
上司のさらにその上の上司を呼んだり…

たくさん出てきました!
今回はかるーくやってみたアイデア出しでしたが、単に「面白いクリスマスパーティーを考えよう!」というお題では到底出なかったものがたくさん出たと思います。

デザイン思考のアイデア出しって、自分の想像力をぐーんと先まで飛ばすための問いを立てることが重要なんですね。
良い問いがあった上で、先程のポイントを押さえれば、どんな人でも思いも寄らないアイデアが出るはず!
みんな素晴らしかったです〜!!

みんな素晴らしかったです〜!!

プロセスその④ プロトタイピング

さてさて、出たアイデアを試すのが、次のプロセス「プロトタイピング」。
目的はアイデアが正しかったのか正しくなかったのか、ユーザーの反応を取るためのもの。
日本語では「試作品」をイメージしますが、きちんと作る必要はありません。手書きでも、ダンボールで作っても、OK。
場合によっては寸劇をやってみるなど、道具すら作らないこともあります。

タイヤメーカーのブリジストンのプロトタイピング事例をご紹介します。

このときのターゲットはUberのドライバー。
たくさん走るからタイヤの減りが早いのに、なかなかタイヤ交換に来てくれない彼らに、どうやってタイヤの減り具合を知ってもらえるか?が問題でした。

アイデア出しの結果、「駐車場に停めたときにタイヤの溝の深さがわかるカーボン紙みたいのがあればいいんじゃないか?」というアイデアをプロトタイピングしてみることになりました。

バスマットで作ってみたそうです。とっても簡易的!
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プロセスその⑤ テスト

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最後に作ったプロトタイプをテストしよう。ユーザーからの意見を聞き、間違っていたら問題を定義し直したり、アイデアを出し直します。
これを繰り返してより良いものを作っていくのがデザイン思考!

なるべく早い段階でテストしよう!

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これまでは一生懸命考えて凝ったものを作って、最後の最後にテストをするのが一般的でしたが、これだと遅すぎるそう。間違ってたときにやり直すコストがかかりすぎますもんね。できるだけ早い段階で、コストをかけずにテストしていきましょう。

デザイン思考で作られた事例

ここで、スタンフォード大学 d.schoolの卒業生が開発した子ども向けのMRI機器をご紹介します。
MRIってこういうの

MRIってこういうの

脳腫瘍などの病気があると、毎月MRIを受ける必要があります。これまでは子どもたちが機械の中で動いてしまわないように、拘束をしたり注射をしたりしていました。
子どもたち(ユーザー)にとっては最悪の体験ですよね。

そこで、MRIを作っているゼネラル・エレクトリック社は、子ども向けMRIを開発するために、まずユーザーを観察することから始めました。

その中で、ある子どもがこぼした
「お兄ちゃんはキャンプに行けるのに私はいけない」
「お兄ちゃんの部屋には色々なトロフィーがあるけど私にはない」

という言葉に着目。

そこから出てきた「その子が持つ病気をアドベンチャーに変えたら、MRIは楽しい体験になるのでは?」というアイデアから、アドベンチャーシリーズのMRIが生まれました。
完成したアドベンチャーシリーズ。楽しそう!

完成したアドベンチャーシリーズ。楽しそう!

このMRIには体験できるストーリーがあります。
まずはパイレーツの格好をした検査技師が子どもの前に現れ、
「今から冒険に出るんだ、辛いけど最後に宝物がもらえるよ」とMRIに送り出します。

そして検査が終わったら本当に宝箱をもらえるのです。

検査中は我慢するだけ辛い時間だった子どもたち。
このアドベンチャーシリーズでは、その時間が冒険の旅に変わりました。
口を揃えて「楽しかった!またやりたい!」と言うそうです。

これにより、ゼネラル・エレクトリック社はアメリカの小児病院のMRIでトップシェアになりました。

「MRI検査」という同じ体験なのに、デザインするだけでユーザーの体験はこれだけ変わる。機能ではなく体験を変える。

ここにイノベーションの種があるのだな、と感じました。

まとめ


今回みんデザとしても改めてデザイン思考の基礎を学び直すいい機会になりました。
デザイン思考のプロセスは、目的によってどこに着目するのかが変わってくる気がします。
吉成さんからは「企業がイノベーションを起こすこと」を軸に教えていただいたので、普段ビジネスに関わっている読者のみなさんも、自分の仕事に置き換えると何が起きるか?が想像つきやすかったのでは。

吉成さん、ありがとうございました!
記念撮影はd.schooleの「d」のポーズで!

記念撮影はd.schooleの「d」のポーズで!

【大ニュース!】吉成雄一郎氏が「みんなのデザイン思考」顧問に就任します!

ここでビッグなお知らせです!
今回講師を務めてくださった吉成さんが、みんデザの顧問に就任してくださることになりました!!!

シリコンバレーで本場のデザイン思考を学び、お勤めの大手総合商社の社内や取引先にデザイン思考をレクチャーしている吉成さん、これからもみんデザの活動や記事にアドバイスをいただくと共に、色々と面白い企画をやっていこうと思います!乞うご期待!
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